がらすが割れた瞬間をみた

ねえなんでこっちを向いてくれないの?
なんでずっとあの子のほうを見るの
あの子の近くに私はいない。

どうして、どうして?

わからない、この悲しさも悔しさもあの子も分からない。
無知な赤ん坊のように私は眺めることしか出来ない
なぜ、なぜ?

ずっとずっと一緒にいたのは私なのに
どうして君はあの子の元へ行くの
私のあげた優しさは、全てあの子の元へ行くのね。

ああ分かった、これは嫉妬だわ。
だから私は涙を流すのだわ、唇を噛み締めるのだわ。
嫉妬なんてはしたない、消してしまわなければいけない。
じゃなきゃ君はもっともっと、離れていく。


あの子はこうして私の手の中で温度を失った。
人形のように動かず、目をあけたまま眠った。
あの子が人形になったときの君の表情といったら。
とても嬉しそうね、涙まで流して。
どうしてそんなに叫ぶのかしら、ああ嬉しいからね。
なぜずっと俯いているのかしら、ああ笑いをこらえているのね。
わかるわ、わかるわ。私もそうよ。

時計の針が何周も何周もした後、君を見かけた。
君はあの時からいつもいつも銀を持つようになった。
きっとそれは私へのプレゼント、いつくれるのかすごく楽しみなの。
その日も君は銀をもっていた。
今日のはいつものより大きいのね、いつものようにカチカチとはならないのね。
君はこちらを向いてから笑って、そして銀を食い込ませた。
君の身体を銀は蝕み赤く赤く色を変えていく。
素敵ね、私も銀より赤の方が好きだわ。
そして君も、あのこと同じように冷たい人形になった。

ああ、どこかのガラス窓が割れたのね、分かるわ。

/がらすが割れた瞬間をみた

さまの素敵なお題を使わせていただきました。

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