short | ナノ




思い描く



「そして、私には夢があるのです」

「おぉ…」


学校の帰り道。ふとあなたにそんなことを言ってみる


「で、なんだよ。夢って」

「ふふ、少し気になってるし。」

「うっせ」

「私の夢は…素敵なおばあちゃんになること」

「はぁ?」


お前今、馬鹿にしたろ。とちいさく彼を睨むと
素っ気なく、続きを促してきた


「あのね、笑いしわがあるおばあちゃんになりたいの。それで…」

「女って…美貌を求めるもんじゃねぇの?」

「いいの!!内面の美しさってやつよ」


彼の言葉を半ば無視し、私は続ける


「子供も大きくなって、光がたくさん入ってくるお家で…」

「お花を育てて、本を読んで、たくさん笑うの」

「それがお前の夢?」


ヘンテコな夢だな。と彼は言う


「残念でした。夢には続きがありますっ」

「なんだよ」

「それから…」


私の話を聞きながら、彼は空を見上げる
あ、どうでもいいって思ってやがる




「隣には、あなたがいるの」





「は?」

「だめかしら」


私が笑うと彼は、もといアーサーは少し拗ねたように
別に。と素っ気なく言った


「あんたはきっと素敵な紳士になってるよ」

「馬鹿じゃねぇの。オレは今も立派な紳士だ」

「ど・こ・が?」

「うるせぇ馬鹿」

「ぜってぇ、お前なんかの隣は嫌だね」


オレまで変な奴に見られる
彼はそう付け足した


「むっかつくわぁ、この野郎」

「そういうとこだよ。直せガキ」

「これのどこが紳士だか」

「お前ガキだから、隣いなくなっちまうぞ」



「仕方ねぇから、オレがいてやるよ。死ぬまで」



「え?」

「別にお前が不憫だからいてやるってだけで…、オレがそばにいたいとか」


そんなんじゃないんだから、勘違いすんな馬鹿ぁ!!





思い描く
(あんたとの未来)



(おじいさん、お花が綺麗ですよ)
(おお、そうか。今行くよ)
(思い出しますねぇ。あの時のプロボーズ)
(ありゃプロボースじゃねぇよ)
(照れちゃって)