ミルクティーと溶け合ったような感じ



私が剣道部に入ったのだと告げたとき、**はすこし怪訝な顔をして「剣道やってたんだっけ?」と聞いてきた
いや、剣道やるのはこれが初めてだよ。と伝えると彼女はさらに不思議そうな顔をして「…じゃあなんで?」と聞いてきた。

そりゃそうだ。


別に剣道がやりたかったわけじゃないし、皆本に誘われたから入部しただけだから。
たまにふと思うけれどもっと楽な部活に入ってしまえばよかったんだ。そうすりゃきっと今よりのほほんとした毎日を送れたのになぁ
剣道だって初心者で竹刀の振り方にも難儀するほど。
なんでわたしは易々とあの提案を受け入れたんだろう


「はぁ…」

「どうしたの◎◎」

「いや、なんか急にめんどくさくなってきて…」

「部活が?」

「うん、なんか…こう、私らしくないというか…体育系の部活とか」


**がストローをずずっと啜った。ミルクティーの甘い香りがここらを独占している


「◎◎さあ、皆本くんの誘いで剣道部に入ったんでしょ?」

「うん」

「◎◎は剣道やりたいとか思ってなかったの?」

「うーん……特には」

「じゃあ皆本くんに気があるんじゃないの?」

「…なんで?」


**はずいぶん突拍子もないことを言うもんだ、なんて思った。
私が腑に落ちないような顔をしてたからなのか**が付け足してくる。


「だって、◎◎が皆本くんに誘われたから入るって…。ましてや興味もなかったような部活に。」

「だってそれは団蔵に…」


そうだ、団蔵がしつこく誘ってくるから他の部活に入ったんだ。皆本に誘われたからだとかそんなんじゃない。


「それは言い訳には入らないよ、◎◎なら加藤くんぐらい黙らせられるでしょ。」


それもそうだ。


「だけど、気があるってことは好きってことでしょ?私、皆本にそんな。」

「恋ってものはね、自分を自分らしく振舞えなくしちゃうのよ。」


さっき自分らしくないって言ってたじゃん。

ぐだぐだと反論を述べる私を**が遮る。
私に諭すように言う**はどうやら最近、クラスの笹山くんのことが好きらしい。道理でそんな夢見る乙女の目だと思ったわ。


「はいはい、じゃあ恋ってどんな感じなの?」

「んー…」


ミルクティーと溶け合ったような感じ
(と、友人が教えてくれました。)


**が飲んでいたミルクティーはずっ、という音を最後に空になった。
いま考えたろ、それ。



「でも、違うと思うよ。だって皆本にキュンっ…とかしないし。」

「なにそのキュンっ…って。」






2012.10.28 超亀更新