僕たちだって



「あ、××さん」

「はい」

「さっき、大木先生が探してたよ」

「うそ、まじで?ありがとー、皆本」



僕らが高校生になってから2ヶ月が経った
相変わらず慣れないことも多いけれど、楽しい毎日を過ごしているつもりだ


僕は当然のように剣道部へ入部し、××さんもあの奇妙な相談会に従うようにして剣道部へと、団蔵はもとより得意のサッカー部へと、無事入部を果たした。

あの日の出来事以来、団蔵から怨念のような視線を感じるのは気にしないことにして。というか、何が原因かは分かりきってはいるんだけれど、そのことを口にするとホントに殺意を抱かれそうなので止めておくことにした。


団蔵は分かりやすいほうだと思う。いや、かなり。
だって恋愛沙汰にはとことん鈍いと言われる僕にもわかったぐらいなのだ。それは、相当態度に出てるということで。


「なのにね、なんで本人たちは気づかないんだろうな」

「虎ちゃあん、そんなの今に始まったことじゃないんだから〜」


虎若と三治郎が話している内容は、もちろんお幼馴染みコンビのことである


「だってよ、かれこれ5年くらいも前なんだぜ。団蔵が◎◎のことを意識し出したの」

「◎◎が極端に鈍いだけなのか」


団蔵と××さんは幼馴染みであるらしい。いや、見ていたらわかるのだけど。
ということは、僕とも同じ中学だったらしい

僕は中二のときにこちらへ引っ越してきた上に、××さんと同じクラスになったことなんてなかったから二人の関係どころか、××さんの存在さえ知らなかった。
あ、団蔵の話ではもしかしたら登場していたのかもしれないけれど、正直言って、余りに五月蝿い奴の声のせいで話なんか聞く気になれなかった。だいたいは覚えてない。



そんな喧しいことこの上ない団蔵だけど、時にはやつの明るさに救われたことだってあるし、団蔵のおかげで××さんにも出逢えたんだから…って!!


僕今何て言ったんだ!?


僕が、××さんと会えて嬉しいとか…そんなわけ、まあ嬉しいとは思っているけれどって、ああああああもう!!!






「喜三太〜、金吾が変だよぉ」

「はにゃ?今日はナメさんたち出してないけどなぁ」

「まさか金吾…お前」

「なっ、何だよ!?別にそういうのじゃないから!」


「道端でエロ本拾ったとか、そういうヒミツ俺たちに隠してるんじゃねぇだろうな」

「虎若、そこに直れ」



そうだ、これは友情だ。友達として××さんと出会えてホント良かった




そう考えた途端、原因不明の疾しさはどこぞかへと去っていった




  僕たちだって
   (なに、こう…世間で言う青春なう?)