少年少女は、



大川高校。略して、大高と人は呼ぶ
おーこー、といえばそうでもないが漢字にして略すと大学なのか高校なのかわからない名前だ。


(そんなことはどうでもいいが)


その大川高校の一年生になった僕は、入学式も終わり、教室へと向かっている最中である。
周りは落ち着かないようで、はしゃぎながら階段をあがっている生徒ばかりだ。
あーようやく高校生かぁ。部活はやはり剣道部だな。あ、人ごみに流されて消えてしまった友人たちはどうしたのだろう。とかなんとか思っていると、後ろに軽い衝撃。


「きーんご!!」

「…喜三太。重いんだけど」

「先生に僕のナメさん取られた〜!!」

「あー…持ってきてたのか」

「だってさびしがってたんだもん」



そんなことを言っているうちについてしまった教室に貼ってある紙を見てみれば、見事にあの十一人組が揃ったものである。仕組んだとしか思えないな。これからまたあと一年が騒がしくなるのかと予想して、金吾は密かにため息をついた。
そんな金吾をぐいぐいと腕を引っ張って教室へ連れ込む喜三太。

騒がしい教室に入り、おそらく庄左エ門のものであろう机に例の9人が集まっているのが見えた。
金吾たちが向かってくるのを真っ先に見つけた団蔵が声をかける


「金吾ー!喜三太ー!また一年よろしくなぁ!!」


あー、賑やかだ









「◎◎ー、一緒のクラスだねー。また一年よろしくね」

「うん。**と一緒になれて安心したわ」


春である。
大変いい天気の春の日である

入学式をすませ、教室に向かうと顔見知りが2人ほど。
一人は、先ほど話した友人の**。中学からの友だちで、気さくな感じのいい奴だ。
そして、もう一人はさっそく教室で騒いでいる阿呆、加藤団蔵である。こいつとは幼馴染と言うべきか、腐れ縁と言うべきか定かではない関係である。たまたま家がお隣さんで、クラスこそ違うが小中と一緒に学校行ってたりする。そんなこんな8年ぐらいをコイツとともにしているのだ。
普通、男女で8年も一緒にいたらうんぬんかんぬんあるだろうが、生憎と言うべきか、そういうのは皆無である。というか私は団蔵のことを恋愛対象としてみていない。いや、もちろん好きだが、違うのだ。無論、向こうも同じであろう。


と、なぜ私はこんなにも加藤団蔵との関係を話さねばならぬのか。馬鹿馬鹿しいので、ここでやめる。全てはおまえが阿呆だからだ。と何の非もない(それは自分で分かっている)団蔵を睨む。傍から見れば一目惚れをした相手を見つめているように見えるかもしれないが、別に知ったこっちゃない。こちとら8年、波乱の道を歩んできたのだ。









俺は、また一年コイツらと一緒だという喜びと、これから始まる高校生活の夢と希望に胸をときめかせ、ついでに幼馴染の◎◎とも同じクラスでやったなぁとかなんとか思いながらみんなとしゃべっていると隣の虎若が俺を片肘で小突いてきた。


「なんかめっちゃこっちを見てる女子がいるんだけど…」

「んあ?」


虎若の視線に合わせて首をひねれば、こちらをガン見している女子がいた。紛れもなく、◎◎である。その隣には、確か**という名前だった気がする◎◎と仲のいい子もいた。


「◎◎!!」


俺が声をかければ、うん?といった風に首をかしげる。なんだよ、その反応は。ちょっと可愛いとか思ったじゃねえかよ。◎◎は幼馴染で、家が隣で、まああちらは何とも思っていないと思うが、こちらは健全な男子なわけで。つか、もう高校生だし、思春期だし、意識しない方がおかしい。だけど、今の関係もこれはこれで気に入っているので、まあいいかとか思ったりする。
あ、こっち来た


「なんだい、団蔵」

「え、◎◎こそ何?」

「え。別に」

「いやいや、めちゃめちゃこっち見てたじゃん」


それを聞いた◎◎はハッとしたように目を開いて、「アレは違う。怨念をこめてたんだ」と慌てて言った。…怨念て何だよ。


「ふぅーん、じゃあな。お前の友達、呼んでるぞ。」

「あぁ、本当だ。じゃあまたあとでね。ばいばぁい」


俺に適当に別れを告げ、俺に向けていた視線を正面に戻す時、◎◎は視線の先を見つめる。十一人のうち俺の正面にいるのは金吾だ。
その金吾をじぃっと見つめる◎◎。その視線に気づいたのか、◎◎を戸惑いがちに見る金吾。


「…アンタ、睫毛長いんだねぇ」


それが、××◎◎と皆本金吾の初対面であり初会話だった


 少年少女は、
  (新しい季節にて) 




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団蔵と主人公は幼馴染。
金吾は中2からこちらへ越してきました。同中だがクラス数も多く、一度も同じクラスにならなかった。
とかなんとか補足…。