4話




※R18にて注意







普段より格段に苛々とした心境で校内や学校の敷地の見回りをしていると、偶々通った校舎裏で、太陽の明かりに反射する金属の何かを視界に入れた。
まさか、善からぬ物なのか。
そんな不安を抱きながら警戒して足を進めていくと、それは只の鍵というもので。
本当なら其処らに捨てていくのだけれど、これはきちんと店の名前も書いてあるし決して元の場所に戻せない訳ではない。
この学校内で持ち主を見付ける事は不可能に近いが、店に届ける位ならば容易な事。
今日の仕事が終わってから届けに行くとしようと、少々面倒だとも思ったが今の己には丁度良い気分転換になる。
その鍵を片手に持って、雲雀は再び見回りを再開した。







































「草壁。僕は用事があるから早く上がるけど、後の事は任せたよ。手抜きでもしたら咬み殺すから」
「っ、はい、委員長。お任せください!」

午後の授業も終り、既に部活動の活動時間。
デスクの前で直立する大きな体格をした草壁という彼に、雲雀は普段と変わらない調子で声を掛ける。
ただの一言で一瞬怯んだ草壁だが、尊敬して止まない雲雀の前で無様な姿は晒せないと直ぐ様気を取り直した。
手は抜けないというより、抜きたくない。
尊敬する雲雀に一目置かれているようなこの立場といい、他人の名等気にもとめない雲雀に間違えられる事無く名前を呼ばれるこの幸福感。
期待に応えたいと、心底思った。
まあ、雲雀は期待等微塵もしていないだろうが。




「お気を付けて行ってきてください、委員長」

用は済ませたと退室する雲雀に向けて深く頭を下げて、その背中を見送った。














































「……なに、ここ…」

呆然と見上げる店の装飾。
キラキラしたりピンク色だったり、明かに大人の雰囲気を醸し出すこの店。
先程から出入りするのはカップルらしからぬ男女だったり、時折男同士だったり女同士だったり。
最悪だと思って帰ろうかとも思うのだけれど、鍵が無くなるとなればやはり店も困る訳だし、何よりそんな不埒な店の鍵を己が持っているという状況がとにかく好ましくない。
このような店等当然今の今まで入った事が無い訳なので、躊躇はある。
しかし、何時までも店の前で突っ立っていればそれこそ目立つし。
もう、どうにでもなれといった感じで店の扉を開いた。




「これ…」

いらっしゃいませなんて言葉は耳に入らず、とにかく鍵を返さなければという事だけで頭が一杯になってしまってまともに店員と口が利けなかった。
いや、元々利くつもり等無いけれど。
そんな事が災難となったのか、その店員はあろう事か己の腕を引っ張って部屋に案内しますだとか言い始める。




「お相手の方がお待ちですので、此方へどうぞ」
「っちょ、ちが…ッ」

相手が待っているとなれば余計に嫌だ。
寧ろその相手が誰なのか知らないし、元々自分の持ち物でも無い上にこんな店に用は無い。
勘違いだと言いたくともあまりの展開に頭がついていかず、店員がすべき事ではないだろうと思いながらも結局部屋へと強引に押し込まれてしまった。
ふざけるなと扉を開けようとした刹那、部屋の奥から声が飛んできて、何処か聞き覚えのある声に目を見開く。




「なんだよ、昼間は嫌がってたじゃねー……か……」
「…へえ。…君が鍵の持ち主?」

薄暗くなり始めていた事で、相手は直ぐに己だとは気付かなかったらしい。
此方へ近付いてきた足は止まり、驚愕の顔をしていた。
本来風紀の副委員長である彼がこんな場所へと来ているだなんて。
そして、昼間と言えば己が去った後アラウディと二人きりだった筈。
そんな発言から相手がこのような場へアラウディを誘っていたという事に怒りは沸き上がった。
嫉妬とかではなくて、風紀委員長としての立場からの怒り。
服装の乱れは心の乱れとも言うが、正に目の前の彼がそれを象徴していた。




「…不純だな。恋人でもないヤツを誘って、欲求の捌け口にでもするつもり?しかも、男同士で…」
「相変わらずうるせえガキだな。男同士だろうが恋人同士じゃなかろうが、互いに了承すりゃ不純でもねーだろ」
「副委員長の立場を踏みにじるこの行為が許せないな。前から思っていたけど、君、自覚が足りないんじゃない?そんなだからアラウディにも相手にされないんだ」
「っ…てめー……聞いてりゃ好き勝手言ってくれるじゃねえか…」

明かに気分を悪くしたらしい跳ね馬の声。
ドスの効いた低い声音に、雲雀は怪しく口元を歪めた。
このような相手は見たことが無い。
普段から己を子供扱いし、何を言っても馬鹿にされるだけだったのに。
そんな彼が、今目の前で怒りを露にしている。
なんて、心地好いだろう。
此方へ近付いてくる相手に向けて、獲物を構えた格好で口角を上げた。




「君、強いの?」

嬉々とした感情を露にさせて、楽しげに口を開いた刹那。
てっきり跳ね馬と戦えるものだとばかり思っていたのに、構えた雲雀の反撃すらも許さない速さでその両手首を掴み、強引にも奥へと引っ張っていく。
予想外の跳ね馬に一瞬戸惑いを見せた雲雀だが、直ぐ様離せと抵抗をする。
殴りたくとも両手首をそれぞれで掴まれているせいか、何の攻撃も出来ないままベッドへと連れていかれた。




「離せ」

怒りを露にさせた雲雀が、これでもかという眼差しで跳ね馬を突き刺す。
そんな視線に歪んだ笑みを浮かべ、掴んでいた手首を強く捻り上げた。




「ッ、…」

アラウディと戦っていてもこれ程の力を感じた事は無かった。
初めて体感する強い激痛にカランと武器を足元へ落とし、何をするんだと目の前の跳ね馬を睨み付ける。
そんな擽ったい眼差しに口角を吊り上げ、雲雀の身体をそのままベッドへ押し倒した。




「なに…?」
「お前を不純な身体にしてやるよ。そうすりゃ、オレの事だって何も言えなくなんだろ?……バカにするのもいい加減にしろ」

怒りの滲む眼差しを静かに受け止める雲雀だったが、突然首筋へ噛み付かれた事で思わず嫌悪感を全身に感じた。
ただの口先だけではないと、噛み付かれた場所へ這う熱い舌に身体を硬直させる。




「っ、ふざけるな…!そんな理由で、…ッ」
「そんな理由…?……お前、アラウディをネタにオレをバカにしただろ?先に喧嘩吹っ掛けてきたのはお前だぜ」

離せと暴れる身体を押さえ込んで、跳ね馬は歪な声音で言葉を並べていく。
楽しんでいるような、怒っているような。
アラウディの名前を出され、馬鹿にされた事が相当気に食わなかったらしい。
意図的に馬鹿にした訳ではないけれど、何時もアラウディへ着いて回る跳ね馬の存在が不愉快だったと言えば不愉快だった。
跳ね馬は雲雀の胸元からネクタイをするりと解いて、両手を頭上で縛り上げる。
それをベッドヘッドへ繋げると、あろう事か上半身には興味も示さずベルトを外しスラックスを下げていった。




「ッ、やめろ……!」

腕の拘束から逃れようと力を入れて、脱がされまいと足で抵抗をする。
けれど、容易く足をベッドに沈み込まれ、強引にも下着まで脱がされてしまった。
初めて他人に下半身を晒す羞恥に怒りと屈辱を犇々と体感し、強く奥歯を噛み締める。
腕の束縛から逃れようとも、手首の痛みが増すばかり。
何より、忌み嫌う相手に一方的な行為を強要されているのだから、雲雀の矜持が傷付かない訳が無い。
噛み付く勢いで威嚇をする雲雀に、跳ね馬はただほくそ笑むばかり。
今だ成長途中の幼い身体だけは、未熟で華奢な姿をしていた。
中学生といえど、威勢と矜持だけは大人以上の雲雀。
流石に身体だけは従順なまま育っているらしいが、外見に見合わないその精神力や態度はどうにかしてほしいものだ。
それと、素直に諦めないその強情さも。




「さてと。…痛くても泣くなよ?オレは好きでもねーヤツに優しくしてやれる程、お人好しじゃねーからな」
「……君、よく好きでもないヤツを抱こうと思うよね。頭煮えてるんじゃない?」
「抱こうなんて思ってねえよ、犯すって言ってんだ。……オレが優しく抱くヤツとすれば、それは生涯アラウディだけだからな…」

成る程、以外と一途な所もあるようだ。
こんな事をしておきながらそんな発言をさらりと告げる跳ね馬の神経は疑うが、アラウディを想う気持ちは強ち嘘では無いらしい。
ただ静かに跳ね馬へ怒りの視線を向けて、雲雀は軽蔑した眼差しをする。
理解が出来ない跳ね馬の性癖。
馬鹿馬鹿しいと視線を逸らした刹那、下半身から突き刺すような痛みを感じた。
強引に割り開かれる感覚を感じながら、跳ね馬の身体を蹴ろうとしても己の身体が硬直してしまって思うように動いてくれない。
何より、初めてそんな箇所に触れられる事に酷い嫌悪感を感じた。
異物を吐き出す場である箇所へ、慣らしもしないまま指を突き入れようとグイグイ押されている感覚を覚える。
愛撫さえもされていない身体が、どうやってその指を快く受け入れるだろうか。
剥き出しになる自身だって萎えたまま。
そんな事、わかっている筈なのに。
当の跳ね馬はうっすらと笑みを浮かべたまま、指の先程しか入っていなかったそれを強引に押し込んだ。




「い゙!…たッ…」
「だから言ったろ、痛くても泣くなって」
「っ、…ふざけ……ッ」

激痛を伴う指の浸入に、身体は異物を排除しようと反射的に力が入る。
押しだそうとする指が強引に進んでくるのだから、当然快楽所ではない。
元よりそこは挿入口ではなく、排出するための器官なのだ。
セックス所かキスだってした事もない雲雀にとって、こんな行為は只の拷問でしかない。
喧嘩慣れしている事から痛みには強い筈なのだけれど、内面からの刺激には耐性が無いようで、激痛に抗う術が見付からない。
指が強引に中を満たしていく度に、開いた口からは苦悶の声が漏れるばかり。




「力抜けよ。余計痛くなるぞ」
「だ…ったら…、抜けば…いいだろ……っ」
「…成る程。どれだけ傷付いてもオレは知らねーからな」

やはりといった感じの雲雀の反応に、跳ね馬は手加減してやろうという情けの気持ちを捨て、ゆっくりと進めていた指を無情にも奥まで強引に押し込んだ。















 



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