織姫と彦星



※10年後設定のザン雲













「七夕、知らないの?」
「興味ねえ…」
「言うと思った」


そう言って立ち上がる雲雀。
片手に持つ一枚の短冊を、縁側に掛けてある笹へきゅっと結び付ける。
そのまま綺麗な星空を見上げて、スッと目を細めた。




「…なんて書いた」
「どうして…?興味無いんじゃなかったの」
「七夕とやらには興味ねえが、お前の願い事は気になる」
「…なにそれ」


くすりと笑って、彼の元へと足を進める。
雲雀の部屋へと続く襖に凭れ掛かりながら、何だかんだ言いながら雲雀に付き合ってこうして部屋から出ている。
かと言って機嫌が悪いわけではない。
雲雀の家へ来ると必ず寝間着は浴衣で、普段身に付けない物を着ている訳だから中々に機嫌は良い方。
何より、雲雀と過ごすこの時間がXANXUSにとっては至極の至福。
その彼へ凭れ掛かって、雲雀はぽつりと答えた。




「『この先もXANXUSと一緒にいられますように』って…」
「お前らしくねえ」
「そう言わないでよ。これでも精一杯デレてあげてるんだ、喜びなよ」


くたりと頭を彼に預けて、雲雀は幸せそうな顔で一枚の短冊を見つめた。




「七夕を知らないっていう君に、少し教えてあげる。……織姫星と夏彦星って呼ばれる星があってね。織姫は天帝の娘で、機織の上手な働き者の娘なんだ。そして夏彦もまた働き者で、天帝は二人の結婚を認めた。めでたく夫婦となった二人は夫婦生活が楽しくて、織姫は機を織らなくなり、夏彦は牛を追わなくなった。そのせいで天帝は怒って、二人を天の川を隔てて引き離したんだ。そしてその二人が一年に一度だけ会えるっていうのが、今日の七月七日。けど、七月七日に雨が降ると天の川の水かさが増して、織姫は渡ることができなくて夏彦も彼女に会うことができなくなる。で…この日に降る雨は催涙雨(さいるいう)って呼ばれていて、織姫と夏彦が流す涙といわれてるんだ」
「……ふざけた物語だな」
「まあ…君の感性には合わないだろうね。こういう話嫌いだろ」
「大嫌いだ。水かさが増したから諦めるとはとんだバカだな。本当に会いたいなら泳いででも会いにいく」
「…君らしいね」

平然と言ってのける相手を見て、流石イタリア生まれなだけはあるなと感じた。
XANXUSから告げられる言葉は何時だって恥ずかしい事ばかりで、けれど本人はそれが当たり前で恥ずかしさなんて微塵も無いよう。




「大体、どうして夏彦だとかいう奴は自分から行こうとしねえんだ。ヘタレか?」
「いや、知らないよ…」
「俺なら迷わずお前に会いに行くがな。たとえ洪水だろうとなんだろうと、必ず会いに行く」
「ねえ……そういうのが恥ずかしいって分からないかな」
「知るか。結局お前は俺から離れられねえ、それだけで十分だ」
「…その自信は何処から湧き出てくるの…。まあ、間違いじゃないことは確かだけど…」

XANXUSの一方的な意見に呆れ顔で返事を返したけれど、それは間違いではないのだから良しとしよう。
彼から離れられる日はきっとこの先も有り得ないだろうし、彼もまた離してはくれないだろう。
背後からぎゅっと抱き締められて反射的に頭を持ち上げると、月光を背景にして夕闇に浮かぶ綺麗なXANXUSの顔が見えた。














ねえ、君だったら何をお願いするの…



















星空の輝く七夕の夜。
優しい口付けを交わす二人の気持ちは、この先もずっとずっと離れる事は無いだろう。
短冊に書いたその願いは、二人で叶える物なのだから。










........end

ザン雲で落ち着いた大人の絡みを書きたかったのですが若干ザンザスが崩れててすみませんorz
文章に出てくるXANXUS←が面倒でしt((

彦星って夏彦星って言うんですねびっくり←ばかやろう
※途中出てくる雲雀の解説は全てが正しい訳ではないと思いますので鵜呑みにされないようお気をつけください。
ただばばーっと調べただけですので。(土下座)







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