二人の秘密




パロディです
雲雀が風紀委員長から生徒会長へ昇格しています。
10年後の雲雀は自由気ままな鬼教師。
因みに担当は数学…のつもり。
あまり話しには関係ないですが。
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帰りの身仕度を終えた雲雀は、風紀…ではなく生徒会と刺繍された腕章を腕に通し、ベスト姿で生徒会室へと足を運んでいた。
そして雲雀は朝の出来事を思い出す。
















「待ちなよ」


朝礼が終わった途端、ただでさえ群れる事が嫌いな雲雀はさっさと椅子から立ち上がり体育館から出ようとした。
けれど扉の前で呼び止められる。
聞きなれた声にまたかといった顔で振り向いた雲雀の視界に映る、長身の男性教師。
何故だか顔が似すぎている二人は自然と学校の噂になっていた。
容姿を含めて。




「また何か用?いい加減しつこいんだけど」


教師相手でもこの態度。
雲雀本人はこれが普通なのだからすました顔をしているが、教師である恭弥の表情は緩く曇る。
加えて、雲雀は生徒会長という立場であるにも関わらず、今まで一度も授業というものを受けた事が無い。
重大な問題ではあるのだが、雲雀の両親は大きな会社を持っていて、所謂お金で揉み消しているようなもの。
テストさえも受けないのだから頭が良いのか悪いのかも定める事が出来ず、教師一同は困り果てるばかり。
そこで雲雀を更生してくれと、鬼教師で有名な恭弥が抜擢されたのだ。
全くいい迷惑だとも感じる恭弥だが雲雀の事はまんざら嫌いではないらしい。
なんだかんだ言いながらもこうして日々接触し続けている。




「放課後指導室へ来て。来なかった時は覚悟しておくんだね」
「は…?」


突然の申し出にポカンと反応する雲雀。
恭弥はそれだけ言うと、もう用は無いといったようにスタスタと職員室へと戻っていく。
一方的に言われた事も気にくわないが、何より自分に対して上から目線な相手が気に入らない。
自分に楯突こうとする人物はそうそう居ない為に余計苛立ちは増すばかり。
雲雀は遠くに見える恭弥の背中を睨み付けた。


















そして今に至る。
少々苛立ちながらも目的の場所、指導室へと足を進める雲雀。
つまりは今現在放課後。
そのせいか生徒の誰とも顔を合わす事なく目的場所へと辿り着いた。




「ちゃんと来たね。あの言葉の意味がわからない程バカじゃないらしい」
「喧嘩売ってるの?」
「何でもいい。とりあえずそこ座りなよ」


ムカつく。
雲雀の苛立ちは徐々に募るばかり。
それとは逆に大人の余裕とでも言いたいのか、普段通りの表情で持ってきていたファイルから一枚のプリントを取り出す。
そしてそれを正面に座る相手へと差し出した。




「さすがにそんな問題は解けるよね?」


目の前に出されたプリント。
そこには数学の問題が数個並べられているただの問題用紙だった。
恭弥の言葉にカチンときながらも渡されたシャーペンを片手に早速問題に取り掛かった。


















「………」
「………ねえ、まだ?」
「うるさい黙って、気が散る」


簡単にシャットアウトされた恭弥の声。
しかし余りにも遅い雲雀に恭弥も次第に苛立ち始めた。
元々二人とも短気だ。
そしてここまで時間が掛かるということは解けていないと取るが先決だろうと、半ば諦め状態で雲雀の出来たという合図を待った。




「…出来たよ」
「どれだけ時間掛かってるんだ…」
「うるさいな、用が済んだら早く帰してくれる?」


まだ済んでないと、視線で訴える恭弥。
プリントを受け取った相手が確認し始めたのを視界に映すと、改めて自分と似る顔の箇所を見た。
自分にとって相手が一番嫌いなタイプだが、何処か性格が似てる気もしない事もない。
時折相手の行動は自分の行動と重なるから、相手の心境が手に取ってわかる時がある。
まあわかりたくもないんだが。
そんな事を考えながら待つ事10分。
目の前の相手が大きなため息を吐いたと思えば持ち上げた顔はやけに清々しい。
なんだか嫌な感じがする、というより気持ち悪い。
同じ顔をしてそんな笑顔を作らないでほしい。
雲雀は目の前の相手があり得ない笑顔を浮かべている様に眉を寄せた。




「君の頭は最悪だね」


勘に触る言葉をさらりと言ってのける所は似ている、気がする。
けれど言われるのは気分が悪い。
ギロリと目の前にいる教師を睨んだ。




「これ、一問も合ってないんだけど」
「!」


そんな筈はないと、咄嗟に相手の手にあるプリントを奪うように抜き取った。
そして目に飛び込んできたのは×ばかりの答案用紙。
まさか…、というような表情で呆然と目の前にある現実を瞳に映す雲雀。
自分の頭脳はいつの間にかこんなにも劣ってしまったのか。
学校一の不良、そして学校一の頭脳とまで言われた自分の知識なのかと、雲雀は目の前に映る現実を認めたくなかった。




「来週からテスト期間に入る事、生徒会長の君なら知ってるだろ?」
「それが…?」
「そのテストで数学80点以上取れたらしてあげる」
「何を?…」
「セックス」
「っ!…」


恥ずかしい言葉をサラリと言ってのける恭弥とは違い、不意を突かれたのか目を丸くする雲雀。
なんて心臓に悪いんだ。
恨めしそうに睨む雲雀に恭弥はただ余裕な表情を浮かべるばかり。
二人の関係。
所謂セフレというもの。
と、雲雀本人は信じ込んでいるけれど恭弥からしてみれば想いを寄せる相手と身体の関係を持つという事が嬉しい訳で、あえて雲雀の考えは否定せずに今日まで至る。
恭弥のせいなのかお陰なのか、幼い身体はその快感に従順で忘れる事を知らない。
故にセックスなんて直で言われてしまえば刺激を覚えている身体が自然的に求めてしまう。
当然恭弥はそれを自覚して発言した訳なのだが。




「なに言ってるの?そんなふしだらな誘惑に釣られるわけないだろ」
「へえ…、まあいいけど。因みに点取らなかったら一生セックスしてあげないからね」


とまあ欲に従順な身体をわざと揺すぶる発言をするのは恭弥のお得意な所。
ここばかりは雲雀と似ておらず、恋愛やそういった部類に対しては不器用な雲雀とは正反対。




「なんでそうなるの?」
「ふしだらな行為を知らなかった君はもっと点数良かったからだよ。だから点数下がったのはセックスのせい」
「……」


とまあ手のひらで転がされるとはこういう事で。
恭弥の思っていた通りに難しい表情で押し黙る雲雀。
セックスはしたいが頑張るのも嫌だと、一人で葛藤しているのか。
益々眉間の皺は増えるばかり。
まあ堕ちるのもそう時間は掛からないだろう。
恭弥はこの二人の関係に静かに笑った。
いつか相手が気持ちに気付いてくれるまで、この日々は変わらず続いていくだろう。






同じ秘密を持つ二人。
あってはならない関係、教師と生徒。
けれどそんな壁、痛くも痒くもない。











........end







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