10年前の俺にアドバイス




※10年後の綱吉の性格は捏造です。











ボフンという音と共に目の前に立っていた綱吉の周りにもくもくと白煙が湧き立った。
興奮したランボが誤って発射した10年バズーカは見事綱吉に命中し、それまでぽつりぽつりと続けられていた会話もそこで途切れてしまった。
後であの餓鬼は始末しておこうと思うのは何時もの事だが、実際に実行した事は無い。
何故ならあんな子供を咬み殺した所で何の優越感も満たされないからである。
そんな怒りを沸々と感じていた所に目の前の白煙が徐々に晴れてきて、うっすらと見え始めるシルエットに小さく眉を寄せた。
明らかにこの時代の綱吉よりも背の高いラインと、徐々に見え始める黒いスーツの影。
けれど、頭に視線をやると対して変わらない無重力の髪型。
綱吉…なのだろうか。
まるで霧が晴れたようにして露になるそのシルエットの正体に、寄せていた眉を更に近付け此方を凝視する彼の視線とぶつかった。



「あれ…っ、雲雀さんが小さくなってる」


満足に状況判断も出来ないなんてと馬鹿にしたい所だが、10年後の綱吉と会うのは初めてだったから雲雀自身も衝撃を隠せない。
けれど現代から変わらないその口調に、少なからず雲雀はホッと安堵した。



「綱吉だろ…?その顔見ればわかる」
「あはは、やっぱりバズーカですか。まあ、たまにはこんな可愛い雲雀さんを見るのも悪くないですからね」
「……馬鹿にしてるの?」
「違いますって。そんな反応をしてくれるのも今のうちかー…。10年後の雲雀さんなら今の確実にトンファー飛んでますよ。なんだか勿体ない気もしますけど、5分しか時間無いみたいなんでちょっと紙とペン借りますね」
「ちょっと、勝手に…」


なんだろう。
相手に凄く丸め込まれている気がする。
10年経ってこんなに口達者になるものなのか。
少々悔し気に唇を噛みしめた雲雀だが、突然の綱吉の要望に成す術無く、ソファーに座る相手を見送る羽目になった。
そして何やら早速筆を走らせる綱吉。
仕方ないと静かに腰を下ろし、暇潰しにと相手の成長した身体を上から下まで眺めてみた。
髪型は対して変化は無いものの、大人びた顔付きに今の幼さは感じられず、がっしりとした男の体格と言ってもやはり青年独特の綺麗なラインをしていて、スーツに隠れた身体には程よい筋肉が付き、きっと今とは比べ物にならない位の身体なのだろうと勝手に予想してみると、その10年後の自分はどんな姿なのかと気にもなってきた。
特に妄想癖があるわけではないのだが、やはり気になるものは気になる。
そんな事をぼんやり考えていたら、筆を走らせていた綱吉がスクリと立ち上がって、紙を机に置いたままゆっくりと此方へ寄ってきた。



「気になりますか、10年後の俺と雲雀さんの関係」
「…別に」
「ははっ、素直じゃない所は変わりませんね」
「うるさい。大人になったんなら其なりの態度で僕に接しなよ。からかわれるのは嫌いだ」
「成る程…。じゃあ手加減無しでいいですね」


机を挟んで見上げた先には柔らかな笑みを浮かべた綱吉。
10年後の彼と自分の関係が気にならない訳ではないが、皆まで言われると抵抗感が出てきて素直に口に出せない。
だからという訳ではないが、咄嗟に反抗程度に口にした言葉は我ながら可愛くない返事だと思う。
手加減がどうのこうのと言う相手に何を言っているんだと口にしようとした途端、伸びてきた彼の腕が雲雀の脇を鷲掴みし、その細い腕のどこに秘められているのかという程の力で思い切り抱き上げられ、綱吉の背が高いからこそ良かったが何とか机を越えて彼の腕へと納められた。



「っ、ちょっと何…」
「いやあ、こんな可愛い雲雀さんを抱ける日が来るなんてと思いまして。正直、10年後の雲雀さんはやっぱり俺より少しだけ身長あるんで、こういう事出来ないんですよ」
「知らないよそんなの…。とにかく下ろして、不愉快だ」


離せと言って雲雀が抵抗している間も、綱吉は構わずソファーのある方角へと近付いていく。
まあまあと笑顔で雲雀を宥めながら、ソファーへ押し倒すでもなく隣の机へと雲雀を寝かせ、何をする気だと問いかけるまでもなく雲雀はやめろと抵抗するが、綱吉がそんな可愛らしい抵抗に劣る訳が無く嫌がる両手を机に押さえつけた。



「やめろ…っ」
「どうしてですか?誘ってきたのは雲雀さんですよ」
「誘ってないしヤる気も無い。勘違いも甚だしいよ」
「まあ、あと2分くらいしか無いんで少しぐらい楽しませてください…」


雲雀の腕を掴む綱吉の力がぎゅっと込められ、元より開かれていた首筋へ顔を埋めるとキツく吸い上げて濃い鬱血痕を残した。
初めて感じる強い痛みに眉を寄せ、耐えるようにして唇を噛み締める。
この時代の綱吉の残す鬱血痕はもっと優しくてシャツに隠れる箇所にしてくれる。
薄いながらも身体中に散りばめられた所有印は未だ残っているだろうが、その親切を通り越して10年後の彼が付けた鬱血痕はとても濃い上、明らか目に止まる場所に付けられたに違いない。
感覚的に察した。



「ッ、ふざけないでよ…何処に付けてるんだ」
「勿論見える場所ですよ。見えなきゃマーキングの意味が無いじゃないですか」


そういう問題じゃない。
やめろと首を振って抵抗しても、可愛いと連呼されるばかり。
片手を離して雲雀の顎を此方へ向けると、抵抗させる間もなく噛み付くようにして口付けた。



「ン、!…っふ」


開いた片手で懸命に綱吉の胸元を押し返すけれど、10年の差というものは恐ろしく、ビクともしないまま強引に唇を割り開かれて咥内へ侵入する舌にビクリと肩が跳ねた。
そんな雲雀に嗜虐心が湧き出てくる感覚を覚えながら、逃げる雲雀の舌を器用に絡ませ口付けを深くしていく。
くちゅりと水音が立つそれが互いの耳を犯し、沸々と湧き上がるのは欲望に向かう感情的な興奮。
深く濃厚な口付けに呼吸をする事に精一杯な雲雀は、強く瞼を閉じたまま抵抗する事すらも忘れ懸命に熱い口付けを受け入れる。
当然口付けにばかり意識が向いていた訳だから、目の前の相手が白煙に包まれ始めたなんて気付かずに小さく声を漏らしながら口付けを続けていると、途端に全ての感覚に弱さを感じた。
情熱的な熱い口付けも、なんだか戸惑うようにして咥内を掻き乱すし、押さえつけていた腕の力も若干弱くなる。
異様な変化にうっすらと瞼を持ち上げてみると、先程まで大きかった身体は幾らか幼くなり、見慣れた彼の姿が視界に飛び込んだ。



「ッ、!?ふ…ぁ」


パチリと大きく開かれた先には薄笑いを浮かべる綱吉の姿。
慌てて離れさせようとぐっと胸板を押し返したら、性感帯である上顎をなぞるようにして舌で刺激されぶるりと身体が震えた。
そして綱吉の両手は雲雀の耳へと持っていかれ、焦れったい動きで耳を弄る。
刺激の弱い箇所を執拗に責められ、逃れる道を閉ざされてしまいもうどうしたらいいのかと混乱し始める雲雀に、綱吉はそれとなく満足したのか、ゆっくりと離された口からは一線の銀糸が引かれ、それがプツリと切れる瞬間見下げた雲雀は仄かにその赤みを増した。



「っ、は…ぁ」
「10年後の俺と勝手に楽しい事しないでくださいよ。嫉妬で狂いそうです」
「ッしら、ないよ…っ…君が勝手に…」
「あ、何ですかねこれ…」


このやろう、無視をするな。
ぜえぜえと息を切らす雲雀とは逆に、少々意地の悪い笑みを浮かべる綱吉は首筋に目立つ鬱血痕を見て見ぬフリをしつつ、雲雀の頭上にあった白い紙に気付くと、息絶え絶えに話す雲雀の返事もしないまま不思議そうにそれを手に取った。



「…10年後の君が何か書いてたよ」
「へえ…。10年後の俺って結構頭の回転良いんですね。役に立ちました」
「ねえ、何が書いてあったの」
「嫌です。それは秘密」
「………」


ムスッと拗ねる雲雀の髪を優しく撫でてやりながら、綱吉は紙に書いてある内容に思わず悪戯心が躍るのを感じた。
















『雲雀さんの生態』


と書かれた下には熟と長い箇条書きの物があって、その内容に綱吉の見覚えのある事だったりそうなのかと関心する事もあったり、また試してやろうとも思ったり。
とにかく、雲雀自身知られたくないような事までが書かれているその紙を綱吉は静かにポッケに押し込んで、さて、この続きを楽しもうかと口角を上げるのであった。





10年後の雲雀に教えて貰ったこの時代の雲雀の弱点。
まずはそれを試してみよう。
俺ではない奴から所有印なんかを付けさせた罰で…













........end







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