その後の二人





あれから想いが通じ合った二人、なのだが。
想いを打ち明けたからかアラウディの態度が180度変わってしまい雲雀は一人でうんざりするばかり。
何せ元から他人と触れ合う事に嫌悪感さえ抱いていたのだから、ベタベタされるのは余計というもの。




「ねえ、ちょっと…っ。気が散るんだけど」
「ん…別に気にしないでよ。仕事続けたら?」


これが気にせずにいられるかと、握っていたボールペンを握りしめる。
以前より気持ちが通じ合うようになった事実は紛れもない事実だし、それが堪らなく嬉しいのは雲雀だって同じだ。
アラウディと会える放課後のこの時間は何よりも楽しみなのだが、あと少しで書類も片付くというのに、アラウディは雲雀の髪を弄ったり顔を触り出したり。
仕舞いには着ているベストを脱がそうとまでしてくる。
これでは気が散って仕事所ではない。
全く何だというのだ。
構ってくれない事がそんなに不満だとでもいうのだろうか。
しかしアラウディの様子を見る限り不満気な雰囲気は感じない。




「ねえ、さっきから何なの…?」


痺れを切らした雲雀が口を開いた。
するとアラウディは何も答えず雲雀から離れた場所で軽く手招きする。
何かあるのかと思い持っていたボールペンを机に置いてアラウディに歩み寄るも、肝心のアラウディが雲雀から離れる、というよりは横をすり抜けると言うが正しいか。
そのままアラウディは先ほどまで雲雀が座っていた椅子に腰掛けた。
当然雲雀は怒りに震える。
自分を呼んだくせにその空いた椅子に座るなんて。
しかも先ほどからちょっかいばかりかけて仕事の邪魔をしていたくせに。
震える拳に力を込めながらアラウディにツカツカと迫っていく。
殴ろうと腕を振り上げた途端反転する視界。
何事かと瞬きを繰り返せば、先ほど自分が立っていた場所が瞳に映った。
そして何故だかアラウディの足の間へ自分が座っている。




「こうしたかった…」


頭上から聞こえる声に顔を上げようとしたけれど、後ろから強く抱き締められてそれは叶わなかった。



「こうして君を抱き締めると、凄く落ち着くんだ」


耳の直ぐ側で聞こえる低音の声。
なんだ、ただ甘えたかっただけのかと雲雀は小さく口元を緩めた。
自分もそうだが、アラウディも甘え上手ではない。
こういうスキンシップが精一杯の甘えなのだろう、自分の頭へ頬擦りする相手が見ずともわかった。




「だったらそう言いなよ…」


掠れる声で呟いた。
そんな事を言っても相手が言える訳がないのに。
それは一番自分がわかっているけれど、それでも口から溢れるようにして漏れたこの言葉。
いつかきちんと言ってやろう。
互いに甘えて依存し合って、相手の全てがわかった時に言ってやろう。
















この日付けられた首筋の赤い華。
それが消えるまでに、ちゃんと甘えの仕方ぐらい覚えてきてね…。














........end







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