2話






「よお、ダメ弟子。久しぶりだな」
「リボーン!!久しぶりだな」


仕事へ夢中になっていた所へ、バタンと開かれた扉。
そこに現れたのは、半年ぶりのリボーン。
スラリと伸びた身体も、ハットの下にチラつく鋭い瞳も、まるで十年前とは全く違う。
スッと取られたハットの下から端整な顔立ちが現れ、ニッと持ち上がる口角は懐かしさを覚える。




「どうしたんだよ」
「いや、お前の顔を久しぶりに見てやろうと思ってな」


部屋の中央にあるソファーへゆっくりと腰掛けて、リボーンは手に持っていたハットを丁寧にテーブルへ置いた。
デスクに向かっていたディーノは、筆を走らせていた手を止めるとリボーンの向かいに座り込み、彼の言葉に俺もだと返答した。
けれど当の本人はふっと微かに纏う空気を変えて、表情に変化は無いものの、その真剣そうな雰囲気にディーノは何だと視線で問いかけた。




「お前、雲雀とはどうなんだ?」
「はー…またか…」
「あ?何か言ったか?」
「いえ、何でも…」


威圧感のあるリボーンの声は昔も今も健在だなと改めて感じた。
しかし、毎回此方へ来る度に色々な人物から雲雀とはどうなんだとか問われるのにはうんざりする。
公認されるというのも色々と面倒な事があるようだ。




「で、どうなんだ」
「いや…どうもこうも、変化無しだけど…」
「オメー、さっさと雲雀にぶつかってこい。いつまでもそのまんまだから何も発展しねーんだ」
「……告白ならしたぜ?何回も」
「そういう意味じゃねーぞ。言わなきゃわかんねーのか」
「え…?は?………」


リボーンの言いたい事が読み取れないディーノ。
暫く無言のまま、深く考えるように眉を寄せていたディーノだったが、ふと何かしらの思い当たる節があるのかハッとしたかのように目を見開いた。
そして、信じられないとでもいうような顔でリボーンを見詰めていたが、返された眼差しは真剣そのもの。
いや、無理だろと視線を游がせるディーノに、リボーンは大きな溜め息を吐いて呆れたように頬杖をついた。




「オメー、雲雀の事抱きたいとか思わねえのか」
「いや!いや…抱きたいっつーか…まあ……思ってはいるけどよ…。流石に嫌われたまま襲っても強姦になるだろ…」
「雲雀がいつお前を嫌いだって言ったんだ」
「え…?」
「あいつの言葉に耳を傾けてやれ。只でさえ感情が見えねーヤツなんだ。オメーがきちんと聞かねえで、誰が聞くっていうんだ。あいつが好きなら、もっと知るべきだな」


正に的を射たようなリボーンの言葉に、ディーノはただ瞬きを繰り返す事しか出来なかった。
確かに、よく思い返してみれば雲雀に断られた事はあっても「嫌い」という返事を聞いた事は無かった。
てっきり嫌われているものだと思っていたのに。
そうして雲雀の一つ一つの言動を思い出していくと、気付き難い小さな感情だったり意思だったり、少しずつ少しずつ気付き始めた。
ああ、そうか。
嫌われているわけではないのか。
そう思ってしまったら、途端にあらぬ欲望が沸々と湧いてきた。
雲雀に気持ちを聞きたい。
自分の事をどう思っているのか、聞いてみたい。




「俺…今晩恭弥に会おうと思ってんだ。そん時、あいつの気持ちを聞いてみる。あいつの気持ちを…知りてぇ」
「…ま、いいんじゃねーか?あいつは美人だからな。いつ取られるか知れたもんじゃねーが…」
「おい、それどういう…」
「俺が言いたかったのはそれだけだ。じゃあな」
「ちょ、おい!リボーン!」


取られるとはどういう事なんだと問い詰めようとした途端。
リボーンの言葉に遮られ、ハットを被り直したリボーンはさっさと部屋から去ってしまった。
引き留める隙もなく、目的とした物が何も掴めなかった腕が伸びているだけ。
それをゆっくりと下ろして、勢いで立ち上がった身体を再びソファーへ沈めた。




「あー…意味わかんねえ……」


交差した腕を頭に乗せて、ディーノは一人唸った。
取られるとは一体どういう事か。
他にも雲雀を好いている奴がいるということなのだろうか。
ふっと溢れ出た嫉妬心に、ディーノはくしゃりと髪を握りしめる。
もし、自分以外の奴に雲雀を取られたりなんてすれば、きっと自分は嫉妬と憎しみで我を忘れてしまうだろう。
それほどに雲雀が大好きで、愛している。
早く…早く会いにいかないと。
そんな焦りがディーノを急かした。












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