「瑛二くん」
「ん?」
「あの、なんでこっちをずっと見てるのかな」


瑛二くんとのデートでやってきた夢の国。

今二人で乗っているのは、潜水艦に乗って海底の中を冒険するアトラクション。二人掛けの席で、潜水艦の窓から海底の中を探索するのが醍醐味なのに。瑛二くんは一向に窓の向こう側を覗かずに私のことをじっと見つめている。



「君はそっち見ていていいよ。俺はこっち見てるから」
「いや!だからなんで!」
「うん、一生懸命見てて可愛いなって思うから」
「!!」

さらっと恥ずかしいことを言ってしまう辺り、やはり鳳家の血が流れているんだろうか。そんな瑛二くんに見られているのが恥ずかしくなり、私は視線を逸らして窓の方へ向き直った。潜水艦は更に深い海底に迷い込み、景色はさらに暗くなる。




「わぁ…すごいね!瑛二く、」

ちらっと瑛二くんを見てしまったのが失敗だったかもしれない。そのまま唇にキスされた。

な、なんで…!



「ちょっと瑛二くん!」


席は二人掛けとはいえ、背中合わせに他のお客さんも乗っているのだ。誰かに見られたらどうするつもりなのまったく!


「え、だめ?」

甘えたように聞く瑛二くんはずるい。そんな風に見つめられたら許しちゃいそうになる。


「人前…だから、ね?」
「じゃあ二人きりの時、もう一回して良い?」
「うっ…」


可愛い。だめだやっぱり許しちゃう。
本当は今すぐにでもキスして抱きしめて欲しいけれど、そこは必死に理性を保って我慢した。


「あとで…ね?」
「やった」


あなどれない。本当に瑛二くんは恐ろしい子。





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