「ワシらがいない間に何やっちょった!この助平が」
「お前と一緒にするな!龍馬」
「助平に助平と言って何が悪いんじゃ!」

部屋の中にはいつもと変わらない光景。

「お茶どこに置こうか?」
苦笑いで慎ちゃんを見ると、慎ちゃんも苦笑いをしていた。

「二人から離れて、以蔵くんの近くに行くっスか?」
慎ちゃんの視線の先には離れた場所に以蔵がいつものように壁に背を預けて座っていた。

部屋の隅を歩くようにして、慎ちゃんと共に以蔵の傍へ行く。

「以蔵は止めに入らないの?」

私が言うと視線を投げよこして溜息を吐き呟く。

「すでにした」

私がキョトンとしていると慎ちゃんが説明してくれた。

武市さんの部屋ですでに第一ラウンドがあったこと、今は第二ラウンドらしいとのこと。

「武市さんがつまらなそうにしている私を見かねて声を掛けてくれただけなのに」

以蔵に湯呑みを渡しながら、思っていたことを言う。
「先生は御心が広いからな。しかし…」

湯呑みを掴みながら何か言いにくそうな以蔵。
そんな言葉の意味を慎ちゃんが拾い言う。

「男と女っスからね」

その言葉に驚いて赤くなる自分の頬。
否定をしようと必要以上の大きな声が出た。

「勉強を教えてもらっていただけだよ!」

まぁまぁ、わかっているっスから…と宥められてしまった。

もう、本当にわかってるのかな?

まだ納得できない私は鼻息が荒くなっていたらしく、慎ちゃんと以蔵に笑われてしまった。

「お前は鈍いからな。止めてくる」

以蔵が呆れたように私を見てから湯呑みを置く。
そして、立ち上がり二人へと近づく。
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