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食にまつわる30題

扁桃をかたち取る瞳
   
きっとこの珈琲を飲み干す頃には
   
ビスケットでちょっとかさついた声であなたが言った
   
ワイングラスに透かして見る劣情
   
渋谷の喧騒をナイフで切り分けて
   
憂愁は震えるゼリーのように
   
退屈が卓子でエプロンを掛けられるのを待っている
   
氷菓子を舐める青い舌先
   
舌先をちょっとのぞかせて「ちべた」って、言えてないよ
   
口ひげできてるよ、って教えてあげない
   
はじける泡に溺れたい
   
半分この大きい方をあげる
   
青色のドロップが出たら君に告白しよう
   
極彩色の欠片を光に透かす
   
てのひらに夢の剥片
   
飴玉みたいに記憶を瓶に詰められたらいいのに
   
チョコレートのワルツ
   
我夢と一緒に惰気を噛み砕く
   
カステヰラひとかけ分の慈悲
   
ちょっと味の濃すぎた青椒肉絲
山姥切国広+山姥切長義
塩辛い倦怠を絡めて平らげた
折原臨也×平和島静雄
甘ったるいタルトタタン切り分けて
土岐蓬生×榊大地
わたしパイナップルって大っ嫌い
   
愚かしい貴方にはひとかけの憐憫をル
   
七つのメニューからお好きなものをどうぞ
   
毒々しく色づいた享楽にナイフを突き立てる
   
混合酒に恋の隠し味
   
果蜜過多の恋
   
蜜瓜汁酢
   
酒精に溺れた彼の末路について
   

Title by Garnet

Photo by raddiey.net