似た者同士
「なあ、榊君のそれは自分は傍観者やからっちゅう自己防衛なん」
「それは、どういう意味だい」
榊君は俺の言葉に僅かに引き攣らせた笑みで聞き返してくる。どないな意味、て。そのままの意味なんやけどなあ、ま、それを言うたら更にご機嫌斜めになってまうやろうからここは流すんが賢明。
「君には俺はそんな風に見えている、そういうことかな」
ひくり、そないな音が聞こえるんちゃうんかて思う程引き攣った笑いで俺を見下ろす榊君。見下ろす言うても実際の身長差は1センチやさかいそないに威圧的なモンを感じるわけでもあらへんのやけど。
「せやなあ…まあ、真意をあえて隠すんは悪ないと思うで。せやけど、榊君自身はそれで楽しいんかなっちゅう勝手な感想を抱いとるだけやねん」
別に榊君の人間関係を心配しとるとかそないなのとちゃうけど、何となしに…目の前の男は自分自身と似とる部分がある気いがするから。せやから、気まぐれにそれを口に出せば冒頭の台詞が返ってきたっちゅうこと。
「俺は、自分のやりたいようにしているだけさ」
この話は終わりだと言うように首を振り、俺に背を向けた肩へと手をかけて視線を通わせる。僅かに息を呑んだ音を聞き漏らすまいと距離を詰めれば身体を堅くしたんが分かった。
「ま、だ何か用かい」
俺の行動に驚くんもつかの間で、じっと見詰め返す瞳は俺の興味を掻き立てるだけ。せやから。
「ま、良えわ。そのうちきっと、俺の言うてる意味が分かると思うで」
ぐ、と襟首を引っ張って唇が触れる寸前でそう言うたったら目を見開いて僅かに頬を染める榊君が視界の端に映った。
似た者同士
(俺も、お節介な奴やんなあ)
‐End‐
20100403.