お互い様
「ヤキモチ、な」
何か嫌な予感はした。それはやっぱ当たってたみてえで声のした方を向けば今まで話題に上ってた東金が居て。つまりはさっきまでの話を聞かれてた訳で、別に悪い事をしたわけでもねえのに俺の背中は冷汗が伝ってどうしようも無かった。
「…ふ、何て顔してやがる」
そう言って笑った東金は俺の額にかかった髪を退けた。たったそれだけの行為にかあっと熱が上がってきたのを感じて、俺は一体どんだけこいつが好きなんだって頭の奥の方が悲鳴を上げた。
「…やっぱ、妬かれたりすんのって重いよな」
不意に疑問に思った事を口に出せば目の前に居る東金は喉を鳴らして笑いやがった。つかさっきからこいつが妙に余裕なのが気にくわねえんだけど。
「なら逆に聞くがお前はどうだ、如月」
じっと睨んでやったら逆にそう聞かれて。視線がかち合った瞬間に心臓が跳ねたのはこの際放っとく。東金の言葉を反復すれば、一つの答えが出てきて。
「それって、あんたも妬いたりするっつう解釈で良いの、か」
お互い様(…口に出さなきゃ分からねえだなんてだからお前はガキなんだ)
(あんたが今それ言うとただの照れ隠しにしか聞こえねえよ)
(…言ってろよ)
‐End‐
20100819.