- ナノ -






 ふと目が覚めて目の前に居るのは僅かに浴衣の胸元が開けた響也であった。自分の頭の下には響也の腕があり、自分よりか一歳若いその腕は力強く、そして逞しかった。不意に自分の手が掴む物へと意識を向ければそれは響也の浴衣で。昨夜あんなにも求めたというのに、無意識にも自分は更に求めていたのだと思わせられざる負えないその光景に僅かに頬が熱くなるのを感じた。


「……、」

 目の前に居る相手の開けた胸元へと手を這わせばそこには昨夜自分が印しただろう赤がある。そして自分の胸元へと視線を落とせばやはり同じく赤があり。互いが互いへと印し付けたその行為がなんともこそばゆく、また気恥ずかしくもあった。



「…響也、」

 ずっと頑なに呼ばずとしていた相手の名を口にした直後、引き寄せられる身体。偶然とは思えないタイミングにびくりと肩を跳ねさせれば距離が詰まった相手からはそれまでと変わらない寝息が聞こえるだけで。どうせまだ起きないだろう、そう都合良く解釈をし滅多にしないだろう甘え、という行為をしようと。そう考え、相手の胸元へと顔を埋めたのだった。







あさ
(次に目を覚めると)
(如月の腕は俺の背中へと回っていて、)
(言い様が無い程の心地良さに俺の瞼は再度重みを増した)

‐End‐
20100816.
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