- ナノ -



どろみ



「…あー、ここんとこ何かって忙しかったから、な」

 今俺の目の前で布団へと横たわる東金は額にうっすらと汗を浮かべて横向で枕へと顔を押し付けて俯いている。目は閉じられていて微かに開いた唇からは小さな吐息が聞こえてくるあたり多分、疲れからか寝ちまったんだと思う。俺達の布団はシーツが皺くちゃだし、周りには脱ぎ捨てられた浴衣と帯と下着、あとはまあそれ独特の雰囲気が部屋に充満していた。要するにシた、っつうこと。



「…でも、よ。あんたが先に誘ったんだぜ」

 何度も腰を打ち付けて、そんで絶頂へと促して果てさせた。溜まり過ぎじゃねえかって位に東金の腰を掴んで引き寄せた。後から思えばすげえがっついてたんじゃねえか、と。でもそれだけあの浴衣の効果が凄いっつうことになるわけで、あいつも乗り気だったのは確かなんだしここはお互い様だろって割り切る事にした。


「…と、タオルは」

 洗面台でタオルを濡らし一人後始末の片付けをする。勿論、東金の身体も拭いてやってきちんと浴衣を着付け直してやった。着せてる最中に少し、思ったことも無かったわけでもねえけどとりあえずは我慢。流石に寝てる相手に手を出すのはあれだしな。



「はは、あんたって寝顔と普段のギャップがすげえよな」

 普段よりかも少し、幼く見えるその表情は何回見ても飽きることは無くて。暫く見つめて、そんでかるく、唇を味わってから整えた布団へと身を沈める。隣で眠る東金の首元が小さく鬱血していたのはこの際見なかった事にした。


「明日は散々こき使われんだろうな」

 明日の事を考えると少し恐いモンがあったけど。でもまあ、今の時間の代償なのかって思えばそれもましに思える。はは、俺すげえこいつに溺れてるよな。



「んじゃ、おやすみ」

 電気の紐を引いて、隣の東金へと近付いて頭の下に俺の手がくる様に体勢を整える。まあ所詮腕枕っつうやつ。



「…好きだぜ、あんたの事が」







まどろみ
(意識が落ちる直前にそう呟いて)
(俺は意識を手放した)

‐End‐
20100814.
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