やきもち
「重い、」
低く呟かれた言葉をさらりと聞き流し何事も無かったかの様に再び目を閉じた榊に東金は小さく息を吐いた。別に今のこの状態が嫌な訳では無いのだがどうしたって気恥ずかしさが先立ってしまい素直な言葉など言える筈も無いのだ。ちなみに今のこの状態、と言うのは東金の膝へと榊が頭を乗せている、所謂ひざ枕というものだ。
「お前みたいに無駄に伸びた奴は重いんだよ」
「…土岐にはいつもさせてるくせになあ……なんてね」
くすりと笑みを漏らしそう言われれば東金としては黙るしか外ならない。しかし一つ反論をするならば確かに東金は土岐へとひざ枕をしたことはあるが決していつも、などという頻度では無いということだろう。
「…ふ、そんなに黙り込むなんて反則じゃないかい」
暫く続く無言の後にそう言われ、瞳をしばたたかせた、と同時に榊の元へ襟元を引き寄せられる。
「俺だってヤキモチくらいは焼くさ」
互いの唇が触れるぎりぎりでそう呟かれ、その直後に小さなリップ音をたて唇を塞がれれば先程から僅かに赤みを帯びていた東金の頬は更に赤を深くするばかりだった。
やきもち(…っ、蓬生か)
(なんや…榊君、そこ俺のやねんけどなあ)
(誰が、俺の…だって)
(ああ怖い怖い、男の嫉妬は醜いで)
(…もうお前ら黙れ)
‐End‐
20100812.