- ナノ -



音。



びくり、と。肩を震わせたのははたしてどちらだったのか。はたまたどちらも、だったのか。


「……、」

 先程から寮のソファーに座る東金と向かい側にある椅子へと座る響也は互いに同じタイミングで肩を跳ねさせてばかりいる。と言うのも外は夏場独特の空模様で先程からは土砂降りに加え遠くでは雷鳴が聞こえてきたところだった。互いに何に対してのそれなのかは分かっているつもりだがそれを相手に問えば必然的に自分がそれに対しての恐怖を認めているという事になるが故に黙りを決め込むことしか出来ないでいた。


「おい、如月…」

 ひとしきり大きな雷鳴が轟いた直後にそう口にしたのは東金の方であった。対して名を呼ばれた響也は無言で立ち上がり向かいのソファーへと脚を運ぶ。


「…あんたが、先に認めたんだからな」

 お互いに恐怖心でいっぱいの筈なのに尚もそう問えば東金の方はさして気にした様子も無く自分の隣へと僅かにスペースを開けた。


「は、俺様が呼んでやったんだ感謝しやがれ」

 やはり意地っ張りなのは東金とて変わらないらしく一見ただの負け惜しみにしかとれない台詞を口に出した後はそれまでの勢いも無くなりまたも先程同様黙りを決め込むのであった。



―――、



「「……っ、」」

 響也が東金の隣へと落ち着いた直後に先程とは比べ物に鳴らない程の光と音が辺りを包んだ。


「…っ、今日だけだからな」

「当たり前だろ」

 どちらかともなく相手の手を掴むのはその直ぐ後。







光と音。
(ちょお榊君、見てみいやあれ)
(…響也と、東金だね)
(ふ、手なん繋いで寝てまうなん可愛えわあ)
(…よほど雷が怖かったんだろうね)

‐End‐
20100808.
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