自由奔放
俺の恋人は猪突猛進タイプだと思われる。思ったことは直ぐに口に出す、頭より体が先。でもそれが厭味に取られないのは彼の人間性のおかげなのだけれど。
「だーい、ちさんっ」
がばっと、後ろからのしかかってきたのは恋人の水嶋新。見ての通り、男。そして俺も、男なわけで。この先は障害ばかりかもしれないのは目に見えている、だけれどこの手を離せないのは外ならぬ俺が彼に溺れているから。
「ちょっとお、大地サン無視しないでってばっ」
ぎゅう、と後ろから抱き着かれればそのままにしておくわけにもいかずやんわりと腕の拘束を解かせる。
「水嶋、ここは外」
「ぶー、だって大地サンが俺の事無視するからじゃん」
頬を膨らませて言う彼に僅かな苦笑を漏らしつつ肩を竦める。と、同時に唇へと人差し指を突き立てられる。
「ど、うかしたかい」
「新、今は俺と大地サンだけでしょ」
ああ、そういうことかと納得を示すために頷いてやれば嬉しそうににっこりと笑う。太陽のように眩しい笑顔で俺の名を呼ぶ彼に惹かれ始めたのはいつだったか。そんな昔の事を思い出しながら一人、懐かしんでいればぐっと右手を捕まれ握り込まれる。
「新、」
「だって…大地サン全然俺のこと見てくれないから」
ずんずんと腕を引かれ物陰へと向かう。人通りの無い路地裏でぎゅう、と抱き着かれれば折れないわけにもいかないで。自分よりも僅かに高い位置にある猫っ毛へと指を滑り込ませた。
自由奔放(君の行動一つひとつに振り回される)
(でもそれが愛しくて堪らないんだ)
‐End‐
20100418.