- ナノ -
「あっ、…ン、んぅ」
「…ぁ、いい声出てるじゃん」
「……は、ぁ…う、っせ、オマエも、いい顔してる、ぜ?」
「そりゃ、僕だから…っ、」
「…ん、…喋りながら動かすな、ばか」

背後から抱き込む体勢で戯れに言葉を交わしていたら、ほぼ強引に頭を捉えられて唇を噛まれる。頸が怪しい音を立てた気がするけれど万一のときは術式を使うとして、目の前の存在に意識を戻せば黒々とした睫毛を伏せて僕とキスをする甚爾の顔。場所のせいもあって腹に回した手はしっとり汗ばんだ肌を楽しめるし、僕とキスをしながら少し目元を赤らませる表情は扇情的で欲を煽られる。

「ん、…く、そ…あちぃ、」
「まぁねぇ、エアコンぶっ壊れてるらしいし」
「夏本番までにガキ共死なねぇようにな、硝子ちゃんの仕事増えるぜ」
「いっそ傑が雪男的な何かあぁいう呪霊捕まえてこないかな」
「語彙力死んでるぜ、五条センセ?」
「…ン、…言いながら、股締めないで、ばか」
「…っは、…頑張れよ、っ…出したら、夜は無しな」
「はー?聞いてないですぅ」
「いま言った」

色気もクソもない会話を繰り広げながらも、時折混ざる嬌声は僕と甚爾双方の。僕らは別に互いの声が嫌いでもなかったし、色々と抑える必要のない場所でのセックスなら好き勝手喘ぐタイプなこともあってこういう場所で声を抑えて事に及ぶ現状がかなり、頭を馬鹿にしている自覚はあった。
体術の授業を終えた甚爾を廊下で捕まえたのが今から二十分前、流石にこの場で致す真似は出来ずに妥協案として僕のちんこを甚爾の股に挟んだのが今から十五分前。空調の効かない資料室のドアに甚爾の身体を押し付けての背面素股とでも言えるような体勢を楽しみながらも壁にかかる時計を見れば昼休みは残り十分と少し。甚爾もそれには気付いているようでしきりに腿を締めて僕の陰茎を刺激してくる姿に煽られながら、思わず無意識で噛み付いた項はほんのりとしょっぱく、汗のにおいがした。

「…っん、ァ、ばか、噛むな」
「…噛みたくなっちゃった」
「オマエ動物だった?」
「わかんなーい、痕は残さないから、もうちょっと食べさせて」
「…ン、…くそ、」

合間合間に言葉を交わしながらのセックス未満。予鈴の音が聞こえた瞬間に二人して顔を見合わせて、おまけとばかりにぎゅっと締め付けられたちんこが精液を漏らせば甚爾の腹筋も震えたのが分かった。


「ねー、濡れたまま次の授業?」
「あー、どうすっかな。……ナイショ」
「は?何それ可愛くてびっくりした」
「ばーか、ちゃんとシャワー浴びてから戻るわ。次空きだから」
「ふーん?……ね、夜の予定は?」
「フリーだな。…なに、オマエはどうしてぇの?」
「甚爾の夜予約で」
「ハイよ、了解。じゃ、指名料含めてたんまりと土産よろしく」
「はーい、僕も現場から直帰するから待ってな」

手早く身支度を整えてから開けたドア。さっさと歩き始めた甚爾を追いかけながらの会話に緩んだ顔は次の授業までには整える予定。


end