- ナノ -



 何度も何度も、もういい加減に携帯を握り潰したいくらいにはモタモタと行動に移せない俺はどうかしてるんじゃないか。いや別にシズちゃんじゃないから本当に携帯を握り潰したりなんかはしないけど。

 てかそう、シズちゃんだよシズちゃん。俺ってばこんなに意気地無しだったんだあ、と溜め息をつくのも今日何回目になるのか。そうこうしてるうちに時計の針はとっくにてっぺんを越えて日付が変わったことを無情にも知らせてくる。はあ、と吐息を一つ。


「きっと寝てるでしょ」

 誰に言い訳するでもなく呟いてようやく通話ボタンを押せば。耳に響く呼び出し音に心臓はばくばくと音を立てた。


「ばーか」

 暫くの後に、耳に届いた声は確かにシズちゃんのもので。たった今言われた言葉に呆けていたら、何も言わない俺に再度ばーか、と呟くシズちゃん。心なしかその声音が妙に柔らかい気がする。


「期待してた俺がバカみてえだろうが」

 どうしたって口に出せなくて、一日中悩んだあげくに結局昨日は伝えることのできなかった言葉を察してくれたシズちゃんからの返しに俺は情けなく眉を下げるしかなくて。


「おめでとうシズちゃん。愛してるよ、」

 ちゅ、と。携帯越しにキスを贈れば三回目のばーかとの言葉が返されて。


「来年は、一番に言えよ」

 おやすみ、またな。その言葉を最後に切れた携帯を暫く握りしめて余韻を味わう俺はどれだけシズちゃんに溺れているのか。







ダイブ
(シズちゃん格好よすぎでしょ、ばーか)

‐End‐
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20120128.
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