- ナノ -



 びくり、と。肩を震わせたのははたしてどちらだったのか。たまたどちらも、だったのか。


「……、」


 先程から座布団に座る静雄と部屋繋がりの台所にある椅子へと座る臨也は互いに同じタイミングで肩を跳ねさせてばかりいる。ちなみに何故この二人が同じ室内、つまりは静雄の自宅であるアパート内に居るのかは割愛させてもらう。要するに平たく言えばそう言った関係だという事だ。外は夏場独特の空模様で先程からは土砂降りに加え遠くでは雷鳴が聞こえてきたところ。互いに何に対してのそれなのかは分かっているつもりだがそれを相手に問えば必然的に自分がそれに対しての恐怖を認めているという事になるが故にだんまりを決め込むことしか出来ないでいた。


「おい、臨也」

 ひとしきり大きな雷鳴が轟いた直後にそう口にしたのは静雄の方であった。対して名を呼ばれた臨也は無言で立ち上がり静雄の元へと脚を運ぶ。ちなみにあくまでも渋々、そして不快気に、だ。



「…シズちゃんが、先に認めたんだからね」


 お互いに恐怖心でいっぱいの筈なのに尚もそう問えば静雄の方はさして気にした様子も無く自分の隣へと僅かにスペースを開けた。


「…手前が、そうやってビクついてるからだろうが」

 やはり意地っ張りなのは静雄とて変わらないらしく一見ただの負け惜しみにしかとれない台詞を口に出した後はそれまでの勢いも無くなりまたも先程同様だんまりを決め込むのであった。





―――、



「「……っ、」」


 臨也が静雄の隣へと落ち着いた直後に先程とは比べ物に鳴らない程の光と音が辺りを包んだ。


「…言っておくが怖いだとかそんなんじゃあねえからな」

「当たり前でしょ、てかそれは俺の台詞だから」


 どちらかともなく相手の手を掴むのはその直ぐ後。







光と音。
(目が覚めて気付いたのは)
(握り締めた相手の手と、)
(予想以上に安心できる相手の体温だった)

‐End‐
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