- ナノ -



 不意に目が覚めた先にあったのはおじさんの顔だった。何が何だか解らずに、ふと自分にかかる毛布を退ければおじさんの手が僕の背中へと回っていて、空いた片方は所謂腕枕といった体勢に落ち着いている。悶々と記憶を巡らせていれば目についたのは床に転がる酒の空き瓶や缶など残骸が散らかっている光景。ああ、酔い潰れたのか。軽い自己嫌悪に陥った後に現状を思い出す。どうしたものかと、試しにおじさんの腕から抜け出そうと身体を動かしたところで一向に状況は動かない、おじさんの力が強すぎるせいだ。第一何故こんな状態なんだ、そう自身を問い詰めたところで昨晩の記憶はうっすらと揺らぐ程度。相当飲んだのか、と。再び自己嫌悪に陥っていればふと、背中に回された腕の力が強くなりおじさんの胸元へと抱え込まれるのが分かって身体を固くする。おじさん相手に何だこの様はと目眩を感じ緩く首を振れば、バニー、と。小さく呼ばれた名前に肩が跳ねる。不意打ちだから、と理由付け何とか顔を上げた直後に飛び込んできたのは幸せそうに眠るおじさんの姿、口では再度、バニー、と。おじさんの示す僕の名が紡がれるのが分かり、何故か、頭の奥がぐらついた。貴方ばかりずるいです、不意に襲ってきた眠気には逆らえずにそう口に出し、おじさんの胸元へと顔を埋めた僕を責めないで下さいよ。だって先に動いたのは貴方ですからね、おじさん。



‐End‐
20111124. (戻る