- ナノ -



 時計と睨み合うてもう何分やろか。色んなおめでとお、の言葉を貰えたんは嬉しい、ほんまに。ここんとこはライブやったり任務やったりでバタバタしとったから正直誕生日なん祝ってもらえるて思わへんかったから尚更。せやけど人間て欲出るんや、そらもう厚かましいくらいに。祝ってくれはる人らが居るだけで幸せなんに、まだ、欲しとる、そないなこと顔には出さへんけど。



 早よ寝えや、て。こないな年になっても俺のこと気遣ってくれはるおとんに頷きを返して自分の部屋に向かう。携帯にはさっき廉造と坊、子猫から届いたメールを保存したとこ。電話で言うてくれたんやから構へんのに変なとこ律儀な奴らやんなあて笑うた。せやけど、やっぱ、柔兄からはなんも連絡が来おへんくて。まあ任務やししゃーないて頭では分こうてる。せやし心は、理解してくれへんねん。





「柔兄のあほ、」

「誰が阿呆やねん、金造」


 首がぐき、て危ない音たてたんにも構わずに声の聞こえた方へ振り返る。いつ帰ってきたんか、そこに居ったのは紛れもなく柔兄で。携帯のディスプレイはあと数分で日付が変わるて示しとった。



「今から、お前を貰うで。文句は言わせへん」

 頬かきながら、せやけどじっと俺を見て言わはった言葉に胸がぎゅう、て苦しなる。あほやん俺、女ちゃうんやから好き過ぎて胸痛いて何事やねん。頭の唯一残った冷静な部分がそう言うてたけど、どうにも我慢効かへんかった。



「しゃーないからくれたるわ、あほ柔兄」

 精一杯の強がりでそう言うたったら、泣くまで離さへんで、て。腕引っ張られて気い付いたら柔兄の胸板が目の前にあった。







とくべつ
(誕生日、おめでとおな)
(ぎゅうぎゅうに抱き締められて言われた言葉)
(漸く心ん中が満タンになるんが分かって柔兄におもいきし抱き着いた)

‐End‐
金兄おたおめ、柔兄とお幸せに!サイト名明記でフリーです。20111117.戻る