- ナノ -



 きっかけは確か、たまたまテレビで流れていたCMだった、はず。いつもと変わらずに盛り沢山に出された課題と格闘してる最中にドグマは一人ふらっと出て行ったかと思えば何故かドアからしっかりと部屋に入ってきて。あれ、さっき窓から出て行ったのになんでドアからなの、なんてことを口に出す前に髪をおもいっきり引っ張られた、痛い、いや、ほんとに、痛いんだってば。


「…ドグマっ、いた、痛いってっ」

「あれは何だ」


 あれ、と言われて指を差された先にあったのは何の変哲もないテレビで。と言うか、毛穴がね、すっごく痛いんだってば。僕の声は聞こえない振りをするドグマはいつもと変わらずに傍若無人だなあって思う、絶対口には出さないけど。


「て、れびがっ…ど、したのっ」

 余りの引っ張りに格好悪いけど涙目で聞けばにんまりと満足げな笑顔を浮かべるドグマがそこには居て。あ、また何か無理難題を押し付けるんだよきっと、とかなんとか考えてたら、何故か、手を取られた。


「あれをやってみろ」

 そのままに僕の手はドグマの髪へと着地して。そういえばドグマは僕の勉強道具をお尻で踏みつけながら机に腰掛けてるから僕にもドグマの髪を触ることは意外と簡単だったってことが印象に残ってたりする。



「あれ、って…もしかしてドグマの髪を撫でるの、」

 恐る恐る聞いたらドグマはしぱしぱと瞬きをして見せて、それで珍しく何も企んでいない様な顔して笑った。綺麗だなあ、って。思わず口に出しちゃった言葉には無視を決め込んだドグマが一言、早くしろ、って。わざわざ人間になってきてやったんだ、相変わらずトロいな貴様は、だってさ。







たまには、
(何だか随分と平和だなあ、って)
(そう思えたのは、きっと間違いじゃない、よね、ドグマ)

‐End‐
ついったで仲良くして頂いているきよすけさんと雨ちゃんへ、捧げます。TL上でのネタを勝手にお借りいたしました、ご容赦下さいませ。20120421.戻る