- ナノ -

ふれる、ふれられる+α




 いま、ランランはまるで小さな子どもがそうするかのようにぼくの胸へと顔を埋めている。ブラジャーやスリップを身につけていない肌がそのまま露出したぼくの胸の膨らみの間、谷間の部分に鼻を沈めるようにして身体を擦り寄せてくるからランランのまとうかおりが鼻をついてなんとも言えない気分になってしまうのが悔しかったり。ランランの格好は生まれたままの姿、さっきまで身体を覆っていた下着類はぼくが脱がしてしまって今はベッドの隅の方へと押しやられている。ぼくはぼくで下のみ、サイドが紐になったパンツだけを穿いていて上はさっき言った通りの格好だ。

「らんらん?」
「なに」
「んーん、ちょっぴりくすぐったいかも」
「あっそ」

 完全に拗ねた口調で返されることとなるそもそもの原因は自分にある。だからいくら擽ったいからといって無理矢理にランランを引き剥がすような真似はしたくないし第一にぼくとしては隙あらばずっとランランを抱きしめていたいくらいの心持ちなのだから端からそんな考えは捨てている。ランランはぼくの胸がお気に入りらしくこういった場でシーツを共にしているときは特にその傾向が強いように思えた。

「れい、ここ」
「ん?」
「乳首、たってねえの」
「ひゃっ、……もういきなり何すんのお」

 不意に生暖かい感触がぼくの胸の先、乳首に触れて思わず高い声が出る。ぼくの反応に気を良くしたのかランランはそのままちろちろと舌先でそこを擽ってくるからぼくとしては何ともむず痒くて、そして内腿をどうにかして擦り合わせずに済む道を探さなければと気持ちばかりが焦ってしまう。ランランはぼくの乳首が気に入ったのか、赤ちゃんのように吸い始める。そんなことをしたってぼくから母乳が出ることはないのに、瞼を伏せて、毛量の多い睫が影を作って、そうしてしきりにぼくの胸を吸う。ランランに吸われることでぼくの意思とは関係なしに乳首は芯をもって立ち上がってしまい、どうにも気恥ずかしくて下唇を噛む羽目になったけれど、それでもランランのこの行動をぼくは止めようという気にはならなかった。

「ぼくのおっぱい美味しい?」
「ん、あったけぇ」

 小さく返されたその言葉と上目に寄越された視線。瞳を細めて綺麗に笑う蘭を見てしまえばぼくの擽ったさなんて二の次だ。
 ああ、幸せだな、そう思ったのがぼくだけではありませんように。

「ね、蘭」
「ん」
「好きだよ」
「…ん、知ってる」

 頬に赤をさしてのその言葉。大好き、愛してる。それだけじゃ足りなくて苦しいくらいだよ、ね、蘭もきっとそうでありますように。



‐End‐
20131122.