- ナノ -

happy birthday





 9月29日午後11時ちょっと過ぎ、つまりはランランの誕生日が終わるまで一時間を切っちゃったわけで。ぼくはと言えば最寄りからタクシーを捕まえて気持ちばかりが焦るままに後部座席に座っているところ。勿論日付が変わった瞬間にランランにメールはした、返事が返ってきたら電話をしようかなって思ってたけど残念ながら返ってこなかったからきっと寝てるんだろうなってそのままぼくも夢の中へ。ランランは今朝の収録が早いって言ってたし起こすわけにはいかなかったから、でも、誕生日を迎えて最初の一声をぼくが一番に聞けたらなあって思ったのはほんと。


 そのままぼくも朝一の撮影に向かって雑誌のインタビューだったりバラエティの収録だったりでランランとは話せずじまい。いつも何だかんだで擦れ違う寮内でもランランを見掛けることはなかったし、現場も今日は違ったから一日中会えなくてそろそろランラン欠乏症になりそう。大袈裟だろ、ってきっとランランは笑うだろうけどぼくにとっては死活問題。大好きなランランが生まれた日を祝えないだなんて、恋人失格…――というよりはぼくがぼくを許せなくなりそうだから。つまり早くランランをむぎゅううってしたいなって気持ちばかりが募るわけで。



「お客さん、渋滞に捕まりそうなんであれだったら脇道から降りた方が早いかもしんねえなあ」


 タクシーの運転手さんのその言葉。見れば大通りは確かにブレーキランプの赤ばっかり。携帯の時計を見ればあと数十分で日付が変わる間際。寮までは走れば10分ちょい。迷わず運転手さんへお札を渡してお釣りはそのままに脇道へと走り出す。はあはあ息が切れるのも構わずに足を動かして、携帯をちらちら見れば着々と時間は過ぎていく。


「ランラン、あの、もう少しなんだけど」



 携帯で発信履歴からランランの番号を出して通話ボタンを押す。1コール2コールの機械音の後に出てくれたランランは少し眠たげな拙い口調で。ああ起こしちゃったかな、だとか疲れてるだろうに、だとか色々思うことはあったけどやっぱり一番はランランに早く会って、おめでとうの言葉を伝えたいなってこと。


「れーじ、今どこだ」


「え、えと、あとちょっと」


「……ほら、おまえが言いたいことあったんだろ」



 促されたそれに思わず足を止める。携帯の時計は23:48。ふう、と深呼吸を一つ。ぼくの気持ちが伝わりますように、そう願ってずっと伝えたかった言葉を口に出せば。



「ん、さんきゅ。おれは明日の収録、午後からだからな……早く帰ってこい、まだもうちょい起きててやる」


 その言葉を最後にぷつりと切れた電話。やっぱりいつもより声音が柔らかくてゆっくりとした口調で言われたそれを糧に最後にラストスパート、寮までの道を走った午後11時52分。







happy birthday
(早くきみに、会いたいな)

‐End‐
蘭ちゃん誕生日おめでとう(´ω`)嶺ちゃんと末長くお幸せにヽ(*´▽)ノ♪
20120929.