- ナノ -

アイス




 夏らしいことをしよう、確かにそう口にしたのは自分であったが、いったい何がどうなって今こうして自分の半身を口に含む蘭丸の姿を眺める羽目となったのか嶺二は暑さと快感にうなされた頭でぼんやりと考えるものの明確な回答は当たり前のことながら見付けられずにただひたすら漏れ出る喘ぎとも呻きともとれる声を抑えることに必死であった。
 事の始まりはほんの30分前、嶺二がコンビニで買ってきたアイスを片手に蘭丸の部屋のインターホンを押したことからだ。ピンポーン、などと明快な音は鳴らずに電池が切れかかっているのかぶつりぶつりと途切れ途切れになった音が小さく響くばかり。この音にも慣れたな、とそれまで自分が幾度と無く通った蘭丸の部屋へと思いを馳せながら部屋の主が扉を開けるのを今か今かと待ちわびていた。

「何だ、嶺二か」
「れいちゃんですよーん、ちゃあんとお土産だってあるからね」

 口に紡がれる台詞こそ冷たいものの蘭丸は嶺二を追い返すことはせず、嶺二の手に提げられたビニール袋を受け取ると、さっさと付いて来い、と言わんばかりに背を向けて中へと向かっていく。そんな蘭丸の後を追うように履物を脱いで玄関口の端に並べて――これは嶺二が蘭丸と共に過ごすようになってから蘭丸の動作を見て学んだものである、から部屋へと上がったのであった。

「らんらーん、夏らしいことしよ?ね?ぼくちんアイスたっくさん買ってきたからさー、ほらほら」
「溶けるだろ」
「なら溶ける前にっ、やさーしく、ランランからあーんってしてもらう、とかっ」
「おれが食えねぇじゃねえか」
「もっちろんランランにはぼくからあーんってするからっ」

 嶺二が差し出したカップ体のアイスをちらり、と窺った蘭丸は直後に悪戯に口の端を上げれば興奮冷めやらん、といった様子の嶺二の手を取って背後にあったソファへと押し倒してみせる。ちょうど肘掛けに嶺二の頭が乗るように腰を引いて調整をする蘭丸に、嶺二はされるがままとなって蘭丸に身を任せている。常から、何か行動を起こす際は嶺二が先導していたこともあり、このように蘭丸から何かしらの行動を起こすということが嶺二には堪らなく新鮮に感じたこともあり蘭丸の手に己の身体を預けていたのだった。


「んぅ、っは…あめぇ」
「らんら、ん…あの、」
「…んぁ、んひゃよ」
「うう、冷たいのとあっついのとで、ぼくおかしくなる」

 おかしくなっちまえ、そう言いたいかのようにもごもごと口を動かす蘭丸は今嶺二の陰茎を頬を膨らます程に咥えこんでいる。ソファに嶺二を押し倒した蘭丸は手早く衣服を脱がし嶺二の下半身を外気に晒せば、良い塩梅に溶けたカップアイスを徐に指で掬いあげて晒された陰茎へと塗りたくったのであった。ひく、と肩を震わす嶺二を舌なめずりをしながら眺める蘭丸はカップいっぱいのバニラアイスを塗り終えれば唇を上下に開いてぱくり、とそこを口に含んでみせる。舌先でアイスを舐めとるように陰茎ごと刺激し、手も添えて睾丸を揉みしだく。咥内の熱さに蕩けたアイスが竿を伝ってそこに流れてくれば溶けたアイスを塗りこむ体で嶺二の性感帯を探ろうと指で揉む、そんな蘭丸を下目に眺めなが ら与えられる刺激に内腿を震わせる嶺二は己の股間に顔を埋める蘭丸の、ワックスのついた髪を緩く握って快感に耐えるのであった。きし、とワックスで固められた蘭丸の髪は整髪料特有の僅かなべたつきのせいか嶺二の指に絡まる、そのつもりなくとも刺激から身を震わせることで髪を引いてしまう嶺二に構うことなく蘭丸は嶺二への刺激を止めることはなかった。

「あっ、あー…あ、らんらん、いく、いっちゃ」
「…っは、」

 目線だけで嶺二を捉えたまま、蘭丸は尿道口を舌先で差した後に絡まるアイスごと、ぢゅる、と吸い上げる。唐突に与えられた強い刺激に嶺二は降参と言わんばかりに背中をソファから浮かして吐精すれば口の中でアイスと混ざったであろう精液を、蘭丸は喉を上下させて嚥下する。んべっ、と少しばかり粘着質な液体が付着したままの舌を覗かせて、してやったりといった悪い笑みを浮かべる蘭丸に嶺二はただただ両手を上げて己の負けを認めるしか無かったのだった。



-End-
20130901.