- ナノ -

ぼくの好きな、君




 どちらかともなく「ただいま」って言える幸せをずっと、ずっと大事にしたいと思った。二人で一緒に帰ってきたのに、二人揃って帰宅の挨拶を口にする。玄関から上がったら、必ず靴を揃える姿とか。ふい、ってぼくの方を振り向いてから鍵をかけたかって確認する姿だとか。外から帰ったら必ず一番に手荒いとうがいを欠かさない彼の姿にいつの間にかぼくも一緒に洗面台へと並ぶようになっていた。きちんと石鹸で手を洗ってから、濡れた手を適当に払って自然乾燥をさせていたぼくとは違って彼はタオルを使うから、やっぱりぼくもつられるようにタオルを使うようになった。食事の前と後に両手をあわせて挨拶をする姿、箸の使い方が綺麗なところ、迷い箸や指し箸だとかそういったことは勿論しない。食べ終わった食器は必ずシンクに下げて、ぼくが食べ終わったそれとあわせて洗う姿。ちゃんと使い終わったあとのシンクについた泡なんかを流す様は流石だな、とすら思う。じっと見詰めていたぼくに「何見てんだよ」なんて言う姿も。それをしてさも当たり前といった立ち居振舞いだとか、日常に染み込んでいるそういった一つひとつの動作が好きだなあ、とそう思う。
 どれもこれも、ぼくが彼を好きな理由。ねえランラン、ぼくね、君が大好きなんだ。少しは伝わってると良いな、なあんて。



‐End‐
20130805.