- ナノ -

焦がれる




 ナカを探る嶺二の先端が当たるたびに腰が小刻みに揺れる。内腿に嶺二の手のひらが当てられて足を左右に押し広げられるようにして開脚の姿勢を取らされる。普段なら絶対に嫌だと思うその格好ですら、熱に支配されたおれの脳は拒絶することをしない。
 好き、なんて言葉信じるつもりも信じたくもなかったのに。こいつと出会ってからはその言葉を伝えられるたびに胸がじんわりと暖かくなるのを妙に感じていたのはいつだったか。好きだ、好きだ。嶺二の、周りを引っ張り込んで明るくする性格が。おれを見て目尻を下げて笑う表情が。ファンに向けてのアイドルとしての笑顔が。おれしか知らない欲に濡れた瞳が。身体に触れる指先が。寿嶺二という存在を造る全ての要素がもう離れがたいくらいに大事で仕方ねえなんて、昔の自分が聞いたらきっと鼻で笑うだろう。でもそんな感情が愛しくて。それを与えた嶺二に向けた自分の思いはおまえにちゃんと届いているのか不安にも思う。おれはどうしたって嶺二のように素直に伝えることは出来ねえから。気恥ずかしさだとか、らしくねえだとか、僅かなプライドがそれを許さなくて。嶺二はそんなおれの性格を知っているからいつだって自分から気持ちを伝えてくる。おれがおまえに気持ちを伝えたら、おまえはきっとおれが大事で仕方ないと思うあの表情を浮かべて破顔するだろうから。好きだ、好きなんだよばか。未だに捨てきれないプライドと、こういうときだけ年上の余裕を見せやがる嶺二に向けての負け惜しみ。
「ランランの、ランランとの子供が欲しい、な」
「…っあ、……んぁ…れ、じっ」
 頬を熱い手のひらで包まれて。ゴム越しでは感じることの出来ない正真正銘の、何も隔たりのない嶺二の熱さと存在をナカに感じながら眉間に皺を寄せて呟く嶺二を膜に濡れた視界で眺めれば。その言葉の意味を考えるより先に、後ろが無意識に締まって嶺二を締め付ける。漏れる吐息はどちらのものか。意味のない疑問が頭を過るも、それを放り投げておれを突き上げる嶺二の背中に両腕を回してしがみつく。爪を立てれば背中を傷つけるだとか、そんな気遣いすらできずに無我夢中で嶺二の存在を感じようと身体を寄せれば嶺二はおれの唇を塞いで荒々しくキスをした。
「らんら、…んっ……蘭丸っ」
「ン…っ、んぁ……あぁっ」
 響く声はおれから発せられるものなのに、それが自分のものとは思えないほどに高音で。まるで女みたいなその声に耳を塞ぐこともしないでただひたすらに嶺二を感じたくて唇を開く。酸素を取り入れようとしても喉から出る嬌声が邪魔をしてそれを許さない。唇の端から唾液が零れるのも構わずに、熱に浮かされた頭でただただ嶺二を求めた。
「おまえのっ…子ども、が、欲し…っせぇしよこ、せ…」
「……っ、ランラン」
 質量の増した嶺二の熱さを感じながら腹を精液で汚す。直後にナカで広がる生暖かさに意識が薄れるのを感じながらおれは静かに目を閉じた。



‐End‐
20130508.