- ナノ -

ライブ後




 ライブの後、いつも感じる熱さは放っておけば治まるなんてこともなくひたすらに身を焦がされるような、そんな苦しくも心地いい快感がじりじりと渦巻いている感覚。たくさんのファンからの歓声を浴びて、嶺二と視線を交わして、一度ステージ端に引っ込んでからアンコールの声に応えてもう一度ステージに戻って。全部が済んで楽屋に戻るのはライブの終了時間から30分ちょい経った頃。それまでのステージの熱さ、会場との一体感、嶺二と声を合わせて歌い上げた曲の数々、交差する視線と吐息、その全部が媚薬のように作用して身体を熱くするのが分かって半身は早くも芯をもってぴたりと張り付くパンツを内部から押し上げていた。


「らんらーん、お疲れちゃん!いやー、今日もほんっとに楽しかったねえ」
「ん、当たり前だろーが……お疲れ」
「ふふ、ランランとのライブってどうしてこんなに楽しいんだろ」


 汗に濡れた衣装を脱ぎながらの言葉に相槌を打って、嶺二に倣って背中に不快に張り付くシャツを脱ぎ捨てれば、ばさり、とそれが床に落ちる音が妙に耳を刺激した。楽屋にはおれと嶺二しかいなくて鍵はさっき入る際に締めたから誰かが入ってくるといったこともない。つっても、おれも嶺二もこの後は打ち上げに参加するってだけだからまだ大分余裕はあるしスタッフが呼びにくることもないはずだとこれまでの経験がそう判断した。


「嶺二、」
「んん、なあにランラン?」


 名前を呼ぶなり嶺二の腕を引いて楽屋の隅に備え付けられたシャワーブースに向かう。互いに上半身だけ服を脱いでる形で下はそのまま。コックを捻ってまだ湯になりきってねえ水を頭から被ればおれの唐突な行動に何か言いたげに嶺二が口を開く瞬間を見逃さずに噛み付くようにキスをした。


「…っふ、」
「……っは、…ん」


 頭から降る水が徐々に熱い湯に変わっていくのを感じながらも唇を離すことなくキスをし続ける。嶺二の顎を掴んで顔を上向きに固定してただひたすらに唇を重ねながら窮屈に下着とパンツを押し上げる下半身を嶺二のそれに押し付けるようにして身体を密着させて腰を緩く振れば次第に嶺二の方もその気になったのかおれの腰を抱き寄せてキスの主導権を奪うように舌を差し入れてきた。それに応えるように舌を絡めて、舌腹を押し付けて。何度も角度を変えて味わって、流し込まれる唾液を飲み込んでも熱くなった身体は満足することもなく、それ以上に熱が上がる気さえした。上顎を嶺二の舌で擽られるたびに何も身に着けてない肩が大きく跳ねて、腰を掌で撫でられるのがじれったく思えて必要以上に下半身を押し付けた。


「ランラン、」
「…っ、ぁ……ばか、足りね、」


 唇を離して、嶺二がおれの後頭部に手を回して引き寄せて。耳元で囁かれた名前に腰が震えるのを感じた。シャワーが熱いせいか、シャワーブース内が狭いせいか、楽屋とカーテン一枚で仕切られたその空間に響く嶺二の声が妙に色っぽくて耐えることもせずにもっと、もっとと強請ればおれの言葉に小さく頷きを返した嶺二は流れ出るシャワーを一度止めて、そのままおれの耳元に顔を寄せると耳殻を食むようにして口付けた。軟骨の形に沿って丁寧に舌で触れられて、時折甘噛みを含めた愛撫に腰はびくびくと震えて。中心に差し入れられた舌先の生温さと、耳にダイレクトに響く唾液の絡まる水音に脳が麻痺したような快感すら覚える。ぴちゃり、くちゃり、耳から響くその音と与えられる刺激に耐えられずに下着内で半身がふるりと脈打つのが分かって唐突に身体から力が抜けて嶺二の肩に顔を埋める形で体重を預けた。


「…ん、ぁ」
「……ランラン、もしかしてイっちゃたの?」
「……ン、わりい、か」
「…あーもう、ライブ後の蘭丸ってほんと、いつもより素直だしえっちだし」


 ほんとにぼく我慢できなくなっちゃうや、そう言って困ったように眉を下げて笑う嶺二が欲しくて、背中に腕を回して素肌同士胸元をぴたりと合わせるように身体を寄せればとくんとくん、とどちらのものか分からない普段よりも早い鼓動を感じてそれすらも興奮を煽る材料になった。



 シャワーの湯を頭から被りながら、背中を壁に預ける形で寄りかかる嶺二の足元に膝を着いて膝立ちになる。きつくて仕方のなかった下半身を覆う衣服は全部脱ぎ捨てて、やっと開放された半身は一度イったにも関わらず既に上を向いて先走りを垂らしていた。そんなおれに嶺二は少し目を見開いて見せるから、その反応が癪でもう一度唇を重ねて、ゆっくり焦らしながら唇の輪郭をなぞるように舌で舐めれば我慢できないといったように舌を割り入れられて歯列をなぞられた。

 かちゃりとベルトのバックルが外れる音が響いて、前を寛げて嶺二の衣装を脱がしにかかる。焦っているのか、興奮のせいなのか震える指先では上手く脱がすことが出来ずにいて、上目で嶺二の顔を見詰めれば水に濡れた髪に指先を滑り込ませておれの頭を撫でる嶺二と目があった。


「…ふ……っ、」
「…っく」
「…っは、れ…じ」
「ん、…なあに、蘭丸」


 身に纏う布を全部取り去った嶺二の半身は既に立ち上がっておれのもの同様に先端からは先走りを垂らしていて、眼前に広がるその光景に無意識に喉元を上下させて生唾を飲み込んだ。根元に両手を寄せて、嶺二の股間に顔を埋めるようにしてまず初めは竿に口付けを贈る。ぴくりと身体を震わす嶺二が愛しくて、もっと悦ばせたくて徐に唇を上下に割って半身を咥内へと受け入れた。口の中全体を使って嶺二の陰茎を咥えて、舌で先端を刺激する。尿道口を硬く尖らせた舌先で突くようにすれば嶺二は内腿をひくひくと痙攣させて耐えるのが分かった。頬が膨らむほどに口いっぱいで愛撫しながら指先で睾丸を転がしてみるとおれの髪を強く引く嶺二の姿におれの先端から垂れる先走りの量が増えたように感じる。咥内に広がる独特の味を楽しみながら腰が無意識に揺れることも抑えずにひたすら嶺二の陰茎を咥えて舐めることに意識を集中させた。


「ら、んらん…出そう」
「…ん、ぅ……出せ、よ」
「…っひぁ、……んっ」


 次第に限界が近いのか、嶺二がおれの頭を押さえつけてもっと深く咥えられるように固定する。いつもだったらムカつくこれが、ライブ後にされるってだけで快感に変わるんだから興奮ってのはすげえもんだなと改めて感じながらも咥内に出された苦いそれを何度かに分けて飲み込んでやればイったばかりで息も荒い嶺二に足元から身体を引き上げられてキスをされた。自分が吐き出した精液の苦さを感じながらするキスで果たしてこいつは興奮できるのかと疑問に思いもしたけれど、そんな問いすら無意味といったように荒々しく咥内を荒らす舌遣いにおれの半身は痛いくらいに立ち上がっていた。


「れいじ、」
「…うん」
「…っふ、……はや、く…欲しい、」


 キスの合間、息継ぎをしながら唇の先が触れ合ったままそう呟けば嶺二はへにゃっていつもの笑みを浮かべておれを見詰めてきた。次第に唇が下がっていって、唇から顎、顎から首元に嶺二が口付けていくのが分かる。ちゅ、と肌を何度か吸われて痕を残されて。その僅かな刺激がくすぐったくて身を捩れば逃がさないとばかりに腰を強く引き寄せられて嶺二の半身とおれのそれがくっついた。腰を緩く動かしながら快感を拾おうとしていれば、それに気付いた嶺二が鎖骨から顔を上げて舌でおれの喉元を舐める。喉仏を食むように甘噛みをされて、その刺激にひくひくと後ろが疼く。嶺二が早く欲しい、その一心で手でそっと嶺二の半身に触れれば大袈裟にびくりと身体を震わせるものだから一瞬互いに行動を中断して二人して顔を見合せてどちらかともなく笑い声が漏れた。


「ランラン、ゴム持ってくるから少し待ってて」

 そう言って足早にシャワーブースを出て行った嶺二が背中を預けていた壁に片掌をついて身体を支える。もう片方を後ろに伸ばして、疼く穴を指先で何往復か撫でた後につぷりとその先端を埋める。内壁を擦るように爪先で引っ掻いて指の本数を増やしていけばぐちゅぐちゅと卑猥な音がシャワーの流水音に紛れて聞こえるような気がした。口から漏れる吐息に煽られて、がくがくと震える足に必死に力を込めて体勢を支えるも内部を擦る指先の感触が気持ちよくてそれすらも危くなる。指の数が三本になる頃、髪から水を滴り落とす嶺二が戻ってきて、壁に頬を寄せるようにして自慰に耽るおれの姿に額に張り付く前髪をかき上げて見せる。そんな小さな動作にも心音が高まるのを感じながら嶺二が入るスペースを空けてやればおれの腰に腕を添えて壁に押さえつけるようにして向かい合わせの形をとらされる。何かを言うわけでもなく、雄の目をした嶺二に正面から見据えられて。ひくひくと疼く後ろと先走りを垂らし続ける半身が苦しく感じた。

 ゴム越しに感じる嶺二の熱さに吐息が漏れる。壁と嶺二の身体とに挟まれて突き上げられながら嶺二の首に両腕を回して縋り付く。全体重を預けているにも関わらず、キツそうな表情を一切見せずにおれを責める嶺二もそれなりに興奮しているのか普段するセックスよりか息が荒いのを感じてそれにも煽られる。蘭丸、と掠れた声音で呟かれて互いの腹に挟まれた半身がびくびくと脈打つのを感じながら名前を呼び返せば不意に幸せそうに笑みを浮かべる嶺二がそこにいた。その笑顔があったかくて、意識せず、きゅ、と後ろを締めれば腹の中で嶺二がでかくするのが分かった。


「…っく、らんらん」
「…っあ、……ンぁ」


 互いにシャワーの湯を被りながら行為に耽って、熱い湯が降る中でキスをした。舌を絡ませて、歯列をなぞられて、舌先を甘噛みされながらのキスと、それに伴って与えられる下腹部内の刺激に喉元を反らしながら何度目かの精液を吐き出せば内部の締め付けに呆気無く嶺二が果てるのをゴムの薄い膜越しに感じた。


「…ランランのえっち、」
「……うっせ、熱かったんだ仕方ねえだろ」
「ううん、ぼくも、熱かった」
「…れーじ、」


 さんきゅ、と。ライブそのものと、その後の行為に対しての礼の気持ちを込めて触れるだけのキスをすれば、その直後にぎゅう、と力いっぱい抱きしめられて。胸の奥がさっきまでとは違った意味で熱くなるのが分かった。





ライブ後
(…っし、打ち上げ行くぞ)
(ランラン、切り替え早いって!)
(動いたら腹減った)
(…うう、若いって素晴らしいね)

‐End‐
シネライに滾った結果です。ライブ後に盛る蘭ちゃんはギルティ過ぎますね。
20130325.