- ナノ -

絆される





 収録上がり、ちょっと待っててだとかなんとかぬかして便所に行った嶺二を待ちながらこの間届いたシャイニングの親父からのメールを見る。Twitterであいつらをフォローして24日に企画を行うっつうそれにイマイチ乗り気がしねえままに登録は終えた、あとはフォローをしていくだけの状態になったホーム画面を見詰めて数十秒。散々一番にフォローしろだとか喚く嶺二に根負けしたわけじゃあねえけど、とりあえず嶺二のホーム画面に飛んでフォローボタンを押す。たかがそれだけのことに妙に気疲れして、そのまま携帯を閉じてケツポケットにしまい込んだのとほぼ同時に背中に衝撃を受ければそこには携帯を握った嶺二がいて。


「ランラン!フォロー、してくれたんだねっ」
「……気付くの早えよ」
「ふっふーん、だって通知メールが届いたんだもーんっ」


 腹立つくらいに緩みきった面してその通知メールとやらを俺に見せる嶺二。確かにそこには俺が嶺二をフォローしたっつう知らせのメールが表示されてて、たったそれだけのことに目の前のこいつは喜んでんのかって考えたら途端にむず痒くなるわけで。


「…外す、フォローなんかすることねえな」
「え、うそやだランランやーだ!」
「うっせ、ほら外したからな


 ちょい前と同じようにフォローが0になった俺のホーム画面にあからさまにしょげて見せる嶺二を放って歩き出す。後からぱたぱた駆けてきて俺の隣に並ぶ嶺二は懲りずに横で喚いてばっか。


「ねえランラン、らんらーん」
「うっせー喚くな、ほら帰るぞ」
「ぶー、ランランってば」
「なんだよ」
「ぼくさ、ほんとに嬉しかったんだよ。ランランが一番にフォローしてくれて」
「…だから、なんだよ」


 ぼくのこと、一番最初に思い浮かべてくれてありがと。そう言って笑う嶺二は辺りをさっと見渡した後に俺の手を握る。人気のない廊下に嶺二と俺の足音だけが響いてて、そんで繋がれてる指先は嶺二の体温か俺の体温かは分からねえけどあったかくて。鼻歌混じりでタクシー乗り場に向かう嶺二の横顔を見てりゃもうどうでも良くなって。


「れーじ、」
「んん、なあに?」
「……てめえので、おれのホーム画面見てみろよ」
「へ……、…あ、あれえ、ランランこれ」
「これで満足だろ、帰るぞさっさと」


 ケツポケットの携帯を取り出して、空いた左手でさっきとまったく同じように嶺二のホーム画面に飛んでフォローボタンを押す。そのまま携帯をしまって嶺二の顔を絶対に見ないようにして言えば嶺二が歩くのを止めて立ち止まったのが分かる。繋がれたままの指先に引かれて、俺もつられて立ち止まれば携帯から顔を上げた嶺二はいきなり抱き着いてきやがった。







絆される
(ランラン好き好き、ちょー大好き!)
(バカみたいにそう喚く嶺二の髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜる)
(ああ、俺もバカみてえじゃねえか)

‐End‐
12/16のTwi/tter事件:パターンB
20121218.