- ナノ -

独占欲





 シャワー室から聞こえる水が跳ねる音をBGMにランランの携帯を弄る。ランランの携帯はここ最近じゃめっきり見る機会の少なくなったガラケーだから同じガラケーユーザーのぼくとしては弄るのは簡単なことがちょっぴり嬉しい、まあ会社は違うからTwitterのホーム画面を探し出すのに少し戸惑ったけど。


「でーきたっ、ふふん、」
「なにが出来たんだよ、つかてめえ人の携帯勝手にいじんな」


 毛先からぽたぽたと水滴を滴らせながら下着一枚のランランがぼくを睨む。でも今のランランはシャワーを浴びた後で素っぴんだから普段よりも全然幼いその顔で睨まれても迫力なんて0、というかむしろムラムラしちゃうくらいには可愛いと思う。ワックスが洗い流されてぺたりってなった髪だとか、お風呂上がり独特の赤らんだほっぺただとか。そんなぼくの邪な考えには気付くはずもないランランはぼくが持ってる携帯を覗き込んできた。


「見てみてランラン、ランランのフォローバージン奪っちゃった」
「はあ、なに言ってやがんだてめえは」
「だーから、TwitterのX'mas企画のこと。ランランまだ誰もフォローしてなかったでしょ?」


 にへらって笑いながらたった今勝手にぼくをフォローしたランランのホーム画面を見せれば訝しげに眉を潜めて見せる。ようやく意味がわかったのかランランは濡れたままの髪をがしがし掻き乱しながらぼくの手から携帯を取っていった。


「ん、」
「へ、なに……って、ランラン酷い!なんでリムーブしちゃうのさっ」
「あー、リムーブっつうんだなそれ」


 再度フォロー0になったホーム画面をぼくに見せ付けたランランはうっせー喚くなってぼくの頭を一発叩いてそのまま寝室に向かっていっちゃったからぼくも慌てて追いかける。企画に興味無さそうにしてるくせに、この先のぼくの行動は読まれてるらしくて携帯を手から離さず持っていっちゃう辺り、ぼくとしてはなんだか悔しいわけで。


「ねえ、ランラン」
「うっせーもう寝ろ」
「ランラン、らんらーん」
「……」
「…蘭丸!」
「……な、…っんう、」


 ベッドに潜り込むランランに馬乗りになりながら名前を呼んで。でも頑なに携帯を手放さないランランにめげずに手を伸ばす。顔を逸らして知らん振りをするランランに普段はあんまり呼ばない呼び方で注意を引いて、そのまま唇を重ねた。くちゅり、舌先を滑り込ませながら窺ったランランは目をぎゅうって閉じてるからその隙に力の抜けたランランの手から携帯を奪う。さっとフォロー欄を弄って、閉じた携帯をベッドの隅に放り投げればうっすら目を開けたランランと視線が絡んで。


「……っは、…ん、ばかだろ、おまえ」
「えへ、」
「…ったく、」
「ランランの一番がどうしても欲しくて」


 ちゅぱ、って水音を立ててランランの唇を解放しながらの言葉にランランは呆れた様子で吐息を一つ。ぼくとランラン自身の唾液に濡れた唇には無意識に喉が鳴ったけど、そんなぼくにお構いなしにランランはぼくを引き寄せるとむぎゅって抱き締める。ほら寝るぞ、って髪をわしゃわしゃ撫でてくれるランランに擦り寄ってそのまま瞼を伏せた。







独占欲
(ねえランラン、ぼくの後にシャイニーさん達もフォローしたのってカモフラでしょ)
(翌朝ランランに訊いたら頭をおもいっきり叩かれた)
(でもやっぱり一番目を貰えたことが本当にほんとに嬉しくて顔は緩みっぱなし)

‐End‐
12/16のTwi/tter事件:パターンA
20121218.