- ナノ -

戯れ





 ぴちゃり、舌を這わせる音が静まり返った室内にやけに大きく響いた。そのことにぼくの人差し指を口に含んだランランも気付いたようでひくりと肩を跳ねさせたのが分かる。そんな彼に知らずとぼくは笑みを浮かべていたようで、それに気付いたランランは色の異なる瞳できつく睨み付けてくるけれど赤く染まった耳許は全くもってその威力を相殺、むしろきつい視線と共にぼくを煽るばかりなのに。


「ほーら、ランラン頑張って」


 舌の動きが止まったランランの上顎を指で擽る。上顎の粘膜を指の腹、爪先、爪の表面を使って刺激すればランランの目尻は徐々に赤く染まってきた。行為中の、こんな些細な反応にすらぼくの腰はずんと熱を持つのが分かって我ながらまだまだ若いなあ、と自嘲染みた笑いが喉をつく。眉間に皺を寄せてしきりに舌を這わすランランの舌使いは決して上手いものではなかったけど、というかどちらかといえば拙い方。でも拙いからこそ彼がこの行為に慣れてないことが分かったし、これでいて意外と予想外の動きをするから堪らない。


「……れ、じ、…」


「なあに、ランラン。もしかしてギブアップかなあ、」


 ぼくの指を咥えたままのくぐもった声にわざとらしく小首を傾ければ指先に少しの痛み。ちり、と歯の当たる感覚にランランを見れば未だぼくの指を口に含んだまま。この反応が可愛いんだよね、とは言わないけれど。嫌なら早く吐き出すなりすれば良いのにそれをしないランランはやっぱりすごく、可愛い。







戯れ
(きみが望むならこの指を噛み千切っても構わないのに)
(なんて、それを伝えたらランランはどんな顔をしてくれるかな)

‐End‐
20121101.