- ナノ -

寿嶺二×黒崎蘭丸

安心して、と耳元を擽るテノールが腹立たしい。口振りとは裏腹に、縦横無尽に素肌を撫でる手はシャツのなかに差し入れられているせいか予測が不能。手のひらで踊らされているような感覚に舌打ちを漏らそうにも口からは意図とは真逆の高い音が出て鳴り止まない。「ねえ、ランラン」

目の前の蘭丸は上着を脱ぐこともしないでぼくの両足の間へと膝を滑り込ませる。どこで彼のスイッチが入ったのかは知らないし、闇夜に紛れたその装いのせいで蘭丸の存在が消えてしまうような錯覚を起こすことが少し、ほんの少しだけ気に障る。ねえ君はぼくのものなんだからさ、