- ナノ -

寿嶺二×黒崎蘭丸

伸びる手が触れた箇所が熱い。指の腹の細胞と、頬の細胞がいっしょくたになるような感覚に背筋がぞくりと粟立つのを感じた。目尻を下げて、一見してみれば泣きそうな面をしておれを愛でる嶺二を一度だけ、まぶたを伏せることで撥ね付けてみた。もう一度、まぶたを上げたその先の奴はもう泣きそうにはしていなくて。重なる唇と漏れる息、無声音で囁かれる名前。無意識に出たその言葉に頬を赤らめる奴を、ただ純粋に好きだと感じた。