- ナノ -

寿嶺二×黒崎蘭丸

泣くって言ったときには放っておくくせに、泣かないよって言ったときには傍にいる。ランランは本当にずるい。そのずるさが、心地良いだなんて絶対に言ってあげないけど。
「ランラン」
「…ンだよ」
「…んーん」
何かを話すこともなく、ただぼくの隣に腰かけて雑誌に視線を落とすランラン。悔しいから、泣きたくないのに堪えきれなかった涙はどうしてもおさまってくれない。鼻を啜る音はきっとランランに聞こえているはず、ださいなあ情けないなあって思ったのはもう何回目だろう。
「れーじ」
「…なあに」
「ん」
その一言と一緒に差し出されたのは箱ティッシュ。ぼくが手を出さずにぼーっとランランを見つめていたら中から一枚二枚と引き出してぐずぐずになった顔を拭ってくれた。
「…ふ、ぶさいく」
「ぼく泣いてないからね」
「あっそ」
なんとなく、悔しかったからそう呟けば返されたのは素っ気ない返事。でもそれがランランらしさだから、必要以上に突っ込んでこないそのスタイルも心地良さの理由だと思った。

「もうやだ春しんどい」
「鼻真っ赤だぞおまえ」