- ナノ -

奥村雪男×奥村燐

兄さんがさっきから僕の背中に抱き着いて離れない。つい数分前までは暑い暑いと扇風機を抱え込んでいたくせに、今は、僕を抱え込んでいる。「兄さん、暑いんじゃなかったの」「あちい、けど」けど、なに。肩越しに振り替えって兄さんの表情を窺えば何故か視線を逸らされる。クエスチョンマークが頭にぽんぽんと浮かぶ中、そわそわと視線を泳がせた兄さんは意を決した様子で一つ頷いて、僕の耳元で囁いた。「日付変わったよな、今日はあれだ、はぐの日らしいからなー」ハグ、くらい片仮名で言ってよと小言を洩らしたくなる程の拙い口調。でもそれ以上に、にへらと笑みを浮かべた兄さんが愛しくて堪らなくなった。兄さん、ばか、可愛すぎるよ。