- ナノ -

加地葵×衛藤桐也

衛藤君、と。葵サンが俺を呼ぶ声が心地好く耳に響いた。なに、と。直ぐに振り向くのはなんとなく悔しいから口だけで返事をして視線は手元のヴァイオリンに向けておく。衛藤君、と。再度呼ばれる名前にも生返事を返した後に不意に首元に緩く圧迫間を感じて、それと同時に葵サンの香りが鼻腔に届く。緩く吸われた首元に痕を見付けるのはそれから暫く経ったあと。