K'と車の中
私たちはネスツの残党に見つからないよう深夜に買い出しに出かけた。なるべくコスト削減のため激安販売店に行くことになった。
「じゃあ物は買ったしそろそろ帰るか!」
私はK'を見上げ、駐車場に向かおうとした。
「貸せ」
そうぶっきらぼうに言い買い物袋を持ってくれたK'に「ありがとう」と伝えた。K'はこっちを見ずに「あぁ」と言った。K'はなんだかんだ言って優しいところがある。そう思っているとK'は先に進んでしまい、私は急いで追いかけた。
「待ってよー」
「おせぇ」
といつも通り舌打ちをした。K'は後部座席に買い物袋を投げ入れた。運転してくれる黒いワゴンの助手席に私は座る。車の中はムスクの甘い匂いとK'がいつも吸ってる煙草の匂いで混ざった匂いが充満していた。嫌いではないけどK'らしい匂いだと思う。
「でもちょっと煙草くさいなぁ」
「あ?」
「なんでもない」
私は思わずそう呟いてしまいK'に睨まれたので笑ってごまかした。
しかしいつまで経っても車が発進しない。3分は経ってると思われる。私は煙草に火をつけるK'に声をかける。
「なんでエンジンつけないの?」
「今日は帰らねぇ」
「はぁ?」
K'の言ってる意味がわからなかった。
「みんな心配すると思うよ」
「今日はアンタといたい」
そう言うと顔が近づき私はドキドキした。K'の香水の匂いが近づいてきて内心私はキスされるのではないかと期待していた。目を瞑るとその瞬間、K'が私の顔にフーッと煙草の煙を吹きかけた。
「うわっ...」
「期待したのか?ひでぇ顔だな」
「K'はいじわるだね」
「なぁアンタ知ってるか?さっきの意味」
「え、なんのこと?」
「さっき顔に煙かけただろ?」
「それになにかあるの?」
どうせ嫌な意味なんだろう。私は期待しなかった。
「知らないなら別にそれでいい」
私はふーんと言ってそっぽを向いた。
「なぁ、今夜はアンタと二人きりでいたい」
K'は耳元で囁く。普段アジトにはマキシマやクーラがいて二人きりになることが少ない。二人がいる状況で甘えられるような性格ではないため淋しかったのだろう。そう考えてると自然に肩を抱き寄せられ唇に触れるだけのキスをされた。さっき煙草を吸っていたせいか苦く感じる。
「私も今夜はK'と二人きりでいたいな」
視線が絡み合いもう一度キスしようと顔がお互い近づいた。その瞬間
プルルルルルルと携帯電話が鳴りハッと我に返った。急いで出てみると
「おぉ、〇〇か。帰りが遅いがなにかあったのか?」
とマキシマさんがでた。K'が横で「誰だ」と呟いた。私は小声で「マキシマさんだよ」と伝えるとムッとして携帯を奪い取った。
「なんだよ」
「おー!K'か!〇〇ちゃんのことクーラが心配してたぞ。早く帰ってこいよ!」
「チッ」
そう言うと携帯を切り、車にエンジンをかけた。
「帰るぞ」
と言うとイライラしながらアクセルを踏み込みいつも以上にスピードを出し運転も荒くして駐車場を出た。
「この続きまた今度しようね」
「...あぁ」