空想(傭兵)
※ナワーブと付き合ってます
部屋で一人で本を読んでると「入るぞ!」とナワーブが入ってきた。「食う?」と朝ごはんの残りを無造作に詰めたサンドイッチを渡されたのでありがたくもらうことにした。横に置いてある椅子に腰かけて読んでいた本をパラパラと捲った。カートさんから借りた空想の冒険の物語の本で、普段ナワーブは本はあまり読まない方だがちょっと気になったみたいで口にサンドイッチ全部詰め一気に飲み込み、興味深そうに読んでいた。珍しい...とその姿を眺めていると気付いたのかこちらを向く。
「それおもしろい?」
「俺あんまり本とか読まないけどこれすごくおもしろそうだ」
「だよね。この前だってセルヴェさんから借りたマジックの本すぐ読むのやめちゃったもんね」
そう言って二人で大笑いする。
「俺さ、ガキの頃この本みたいに世界中の色んな場所を冒険するのが夢だったんだ。自作の武器をつくったり、たくさんの仲間といてさ...」
ナワーブの小さいときの夢を○○は相槌を打ちながら聞く。読んでいる本と同じくらい話がおもしろく、何よりも真剣に話す彼の横顔はかっこよかった。ナワーブと付き合って数か月経っているが知らない彼の部分が一気に知れたような気がする。
「まぁ無理だったんだけどさ。俺は傭兵になるために育てられたんだし。...なんか長々と話してごめんな」
「ふふ、ナワーブって結構空想家なのね。でもねあたしも空想とか作り話とかそうゆう類の物は好き。あたしだって小さいころはお姫様になりたかったし、妖精とかドラゴンとかに触れ合ってみたかったわ」
「妖精とかドラゴンに会わせることはできないけどお姫様ならなれるよ。○○なら、いやもうなってるけど」
どういうことかわからず考えてるとそっと頬に口づけをされる。彼の熱を感じた。目を丸くして見ると少し照れていた。
「...俺のお姫様ってこと。ダメか?」
「ぜんっぜんダメじゃない。寧ろ歓迎」
そう言うと安堵の表情を浮かべた。○○はナワーブって案外考え方が可愛いんだなって思った。試合の最中では自分が仲間のために肉壁になったり救助に徹底する彼が日常生活においてこんな考えを持っているなんて誰が思うだろうか?多分あたしにしか知らないことなんだろう。
「あのさ、ナワーブの言ってた冒険ってできるよ」
「え?」
「いつかここを抜け出して二人で色んなところ冒険しようよ。きっと楽しいよ。一緒に綺麗な場所見たりしたいな」
「あぁ、いつか絶対な...。」
そう言って強く抱きしめる。彼の碧色の瞳に吸い込まれたい気分だ。