K'と弱い女の子

最初は小さいし弱いし戦い慣れしてなさそうで正直場違いで目障りな人間だと思っていたが「K'さん」と呼んで走りながらバタバタと近づいてきてオレに微笑みかけ話しかけてくれるその女のことを「かわいい」と思うようになった。

「K'さん!今年は私たちのチーム結構いいところまで行ったんですよ!」

「いいところって言っても三回戦くらいだろ」

「...まぁそうですけど去年よりは成長しましたよ!」

「てかアンタ誰だっけ」

「〇〇ですよ!!」

本当は知ってるけどなって心の中で思った。オレはあんまり他人について興味はないがコイツには興味を持っているのだ。〇〇が一生懸命戦っているのを見ると元気が出るような、オレがいつも思わないことを思わせてくれる。普段うざいとかだるいとかしか思わないオレが。

「で、アンタの目標は達成できたのか?」

「実は三回戦目で当たったんですけどダメでした...。強いし可愛すぎました...」

オレはお前の方が可愛いと思うけどなという言葉が喉元まできたが抑えて適当に返事をした。〇〇はサイキックアイドル麻宮アテナに憧れていて麻宮アテナが戦っているのをTV中継で見てKOFに出たいと思ったと以前語っていた。だが正直目標が高すぎると思う。麻宮アテナはああ見えて結構強い。動きも早いしテレポートもできてしまうので攻撃が当たらないことが多々ある。距離を取られてしまえばサイコボールを撃って攻撃されてしまい、痛い目みることがある。初期からKOFに出続けている麻宮アテナに〇〇が敵うはずがないのだ。

「...でも私、これで最後です」

「は?」

オレは頭が真っ白になった。

「私今年でKOF出場やめます。チームの子たちにもこの事を話して納得してもらいましたし、もうやめることにしたんです」

「なんでやめるんだ」

そう言って〇〇を見ると少し俯いて無理に笑顔をつくって話した。

「私、結局弱いじゃないですか。一昨年から出場してがんばってきたけど全然成長しないし才能がないのだなと感じているんですよ。目標も達成できないし、負けてばっかでもう嫌になって...」

「オレはアンタと戦ってみたかったぜ」

そう言ってオレは頭に手をポンっと置いてみる。〇〇は驚いてオレの顔を見た。少々照れくさくなったがオレは続けた。

「確かにアンタは弱いと思う。けどそれを自覚してるってことはもっと前に進めるような気がするぜ。もっと努力して強くなれ、そしてオレと戦ってくれよ」

人を励ますってことをオレはあまりしたことがなかったためか、最後の方は目を合わせられなかった。〇〇は真剣な顔をしてオレの方を見ている。オレはKOFは嫌いだが色々な事情で出させられている。だが、こうやってKOFに出て〇〇と会って話すことは楽しみではある。

「...私、もう少し考え直してみます。K'さんありがとうございます!」

〇〇は満面の笑みを浮かべていてキラキラとしていた。誰よりも。胸の奥が苦しいようなよくわからない現象に襲われ、あぁきっとオレはこいつの事が好きなんだと実感した。

「私、来年のKOFに出るもう一つの理由思いつきました!」

その瞬間〇〇はオレに抱きついた。

「それはですね、K'さんに会えるって事です!」


オレと同じこと考えてんじゃねーか。オレはいつでも会ってやるよと〇〇に言った。










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