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バレンタイン。それはドーラにとっては果てし無く面倒な行事であったが、周りの生徒達にとっては一大イベントだった。

ある人は無記名の恋文を好意を寄せている相手に送り、ある人は恋人に薔薇の花束を送る。縫いぐるみやチョコレートをプレゼントし合うカップルも居れば、密かに何処かで愛を囁きあっている人もいるようだった。

ドーラは急いでデザートを口に入れ、生徒に囲まれる前に帰ろうと大食堂を後にした。しかし廊下ではすでに大勢の男子生徒が待ち構えており、彼女は内心うんざりしながらも表面上はにこやかに微笑み、生徒の間を通り抜けて人の少ない場所へと逃げる。

するとそこにはお菓子の箱を持ったリドルが同じように困った顔で立っていた。

「…ドーラ。君も同じ…だよね。これ、貰ったんだけどいるかい?」

そう言って差し出されたのは可愛らしい包装の施された高級なチョコレートの箱だった。


「ええ、ありがとう」


「ねぇ…私はごみ箱じゃないのよ?」

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