二人は誰にも見つからないように神経を尖らせながら天気のいい外へと出た。
「珍しいわね、晴れてるだなんて」
芝生の上に腰を降ろしてドーラは三つ目のチョコを口に入れた。
「貴方も食べる?これはそんなに甘くないと思うわ」
濃い色のチョコレートを一つ取って彼の口の前まで運ぶ。リドルが微かに口を開くとドーラはそれを押し込んだ。
「どう?ビターだとは思うんだけど」
「…うん。まぁまぁかな」
「ねぇ、あの木に登らない?」
「君が木登り?やったことあるの?」
「無いわ。教えて」
「やっぱりね。だと思った」
「貴方はあるでしょ」
「勿論」
「じゃあまずあの木まで競争ね!」
ドーラはそう言って坂を下って駆け出した。すぐに追いついたリドルは余裕な笑みを浮かべて彼女よりも先に木の幹に手をつく。
「狡いわ、少しは遠慮しなさい」
「狡いのはそっちだろう?遠慮なんかしたら競争じゃないし」
ドーラは軽く頬を膨らませて彼をトンっと突ついた。リドルは笑って軽々と木に登り、下にいる彼女に手を差し伸べる。ドーラはその手を取り、彼はいとも簡単に彼女を引っ張り上げて太い枝に座らせた。
「貴方は何でも上手ね」
彼に寄りかかりながらドーラは静かに呟いた。
「ドーラは何もかも下手だよね」
「ちょっと失礼すぎない?」
「嘘だよ、君は並の人間よりはマシじゃない」
「嬉しくないわ」
「分かった、正直に言うよ。君は世界で最高の人間だよ」
「嘘っぽいわよ」
「文句ばっかりだね」
「しょうがないじゃない」
「ドーラ、」
彼が名を呼ぶと彼女は彼の瞳を見つめ返した。
「好きだよ」
ドーラは嬉しそうにはにかんで景色に目を向ける。
「それに僕にとって一番大切な人だ」
落ち着いた声でそう言うと、彼女は照れ臭そうにクスッと笑って彼の頬に口付けた。
END
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