ドーラが談話室を通ると待ち構えていた男子生徒たちは一斉に彼女に詰め寄る。彼女が困った顔で肩をすくめている様子をオリオン・ブラックは壁に寄りかかりながら見ていた。
「とっても嬉しいわ。薔薇の花束を…こんなにたくさん…。でも私には恋人がいるの、知ってるでしょう?お気持ちに応えられなくてごめんなさい」
生徒たちの落胆する声を聞きながらドーラは何とか集団を抜ける。
「…御機嫌よう、人気者さん」
そう言った彼女の視線の先には大量のお菓子の箱を抱えたオリオンが居た。
「ドーラには負けるよ。大変だね」
「本当よ」
「リドル先輩は?」
「図書室よ」
「何だよ、ドーラも行けばいいのに。此処に居てもすぐに追い回されるよ」
「それもそうね」
「ね、どれかあげようか?お菓子好きだろ?」
「好きだけど、何が入ってるかわからないじゃない」
「愛の妙薬が入ってるかもね?」
「…怖いわね」
「じゃあドーラには特別に僕の百味ビーンズをあげるよ。全種類入ってるから気を付けてね」
「良いの?」
「良いよ。ほら、早く先輩のところに行かないとまた囲まれるよ。皆凄い目でこっち見てるし」
「分かったわ。ありがとう、オリオン。お返しに貰った薔薇の半分をあげるわね」
「要らないって」
二人はクスッと笑い、ドーラは彼に手を振って談話室を後にした。