それから、
「っとまあ、こんなもんよ。」
銀時は努めて明るく、話を切り上げた。その後、みおに向けてそっと微笑んだ。
「わりーな。結局かーちゃんも助けられずじまいでよ。」
みおはふるふると首を振った。総悟はさっぱり結末が読めないとみおを見つめたが、彼女自身は分かっているようで、小さく頷いた。
「あんね…、ぎんちゃがきたときね、おとーさまも、おかーさまも、ほんとはね、しんじゃってたの。」
ぽつり、と紡がれた言葉はあまりに残酷で。
事も無げに言うみおを、総悟は直視できなかった。
「おとーさまはね、あまんとに、ころされた。おかーさまもそう。ぎんちゃがきたときには、もう、さされてた。」
それでも、たってた。みおを、まもるために。
膝の上で、腕の中で、表情を変えることもなく話す少女に、総悟はなんと声を掛ければよいのか分からなかった。
ガキが気つかってんじゃねーよ、と銀時は立ち上がり、ブラインドを少し開けた。柔らかな日差しが部屋に立ち込める。
みおは眩しさに目を細め、総悟の胸に顔をうずめた。ほどなくして、鼻をすする音がした。
俺が安直に守りてェだなんて思ってるガキは、もっと重たい過去を背負っていた。乗り越えて、いま、無邪気に笑っている。小さなその肩に乗る過去を、少しでも分け合えたら。
「…まぁ、みおの身分なんて、てめーら真撰組が調べちまうほうがはえーだろ。」
「いや、もう十分でさァ…。こいつが何者であろうと、一緒に背負っていくって決めたんでね。」
本格的に泣きじゃくりだしたみおを抱き直して、あやすように背中をとんとんと叩いた。
「泣き止みなせェ…、そのうち干からびちまわァ。」
「…っ、そ、総悟ぉ…?」
「うん…?どした…?」
ぎゅう、と総悟の背に腕を回して、みおはつぶやいた。
「みおは、いま、みんなといれて、しあわせでさァ…。だからね、だからね、」
いなく、ならないでね
小さな体から溢れた精一杯の懇願に、その場にいた全員が力強く頷いた。
「…ったりめーだろ。」
しばらくして、総悟は泣き疲れて眠ってしまったみおを抱えて万事屋を後にしたのだった。