リクエスト | ナノ


かみさま

この目は視たいときは視せてくれなくて、
視たくないものは視せてくれる残酷なもので。


「残夏、どうした?」
いきなり固まったボクに渡狸が不思議そうな顔で見上げてきた。
「……いや、」
なんでもないよ、と膝の中の渡狸のつむじにキスをする。
くすぐったいと照れくさそうに笑う彼が愛しくて愛しくて後ろからぎゅうと抱きしめた。
ねぇ、居ちゃいない神様。お願いします。
この子をいつまでも笑顔にしてください。幸せにしてください。
…そこにボクはいなくていいから。
どうかいつまでも君が笑ってくれますように。
それだけがボクの望みなんです。
渡狸の頭を撫でて、すきだよと囁くと
「…俺も。」
なんてわざわざこっちを見てはにかみ笑顔で言うもんだから、
誘ってるの、とニヤニヤ顔で聞いたら
馬鹿じゃねぇの!?と真っ赤な顔をしてジタバタと、もがき始めた。
頭に顎をのせて、渡狸は子供だねぇと漏らすと、ぴたりと動きがとまる。
「子供っつったな…?」
俺は不良だ!と声を荒げたあとに、手首を掴まれ、押し倒された。
あれ、いつの間にこんなに力強くなったの渡狸。
焦りを隠してこわいこわ〜いと笑うと、うるせえと胸の中にぽすんと倒れこんできた。
あーここまでが限界だったのね渡狸。
ぽんぽん、と背中を叩く。
がんばったね〜、とケラケラ笑うと、またもや、うるさえ、とこもった声が返ってきた。
ほんと愛おしいなぁ。胸の重みがこんなにも心地良いなんて。
急に先ほど視た映像が頭の中に浮かんだ。
……そうだねぇ。やっぱり、





―――自分の最期を見るのはいつになっても慣れないものだ












今だけは夢を視させてね