「ねえ、空色ってさ」
「なんでィ」
「どんな色なんだろうね」
「こんな色じゃねえかィ?」
私が唐突に発した質問に、
総悟は、窓の外のきれいに晴れた空を見上げながら答えた。
さっきの休み時間、神楽ちゃんが私のノートを見て「この表紙、キレイな空色アル!」と言った。
果たして空色とはどんな色なのか、はたまた綺麗なのか。神楽ちゃんいわく、空色は水色とは違くう色で、綺麗な色…らしい。
確かに空色って言うと、夕焼けとか、夜空とか、そういうのも入る気がするから水色って訳じゃなさそう。それに、空が綺麗ってよく聞く言葉…だと思う。
「ねえ総悟ー」
「なんですかィ?」
「空の色って綺麗かな?」
「綺麗なんじゃねぇかィ?」
「まじか」
「あらら大変でさぁ。青春してないやつには分かんないんですぜィ?空色の綺麗さってのは。」
「まじで!?」
「マジでさぁ。なまえ彼氏できた事ないだろィ?それで、どこが青春してるって言うんでィ。年齢=彼氏いない歴とかいう恥ずかしい黒歴史を背負って、」
「う、うるさいな!ほっとい、」
─パコンッ
「お前ら授業ちゃんと聞けーじゃあ総一郎くん、32ページ読んで」
「ちっ………そう、彼は切手コレクターだったから、きっと…」
声が大きすぎて銀八にジャンプで頭をたたかれた。で、総悟は一瞬こっちをにらんだ後、かったるそうに教科書を読み始めた。私のせいじゃないのに。ていうか切手コレクターとかどんな話だよ。
その時、強い風がふいてカーテンが揺れたので、反射的に窓の空を見た。
私はグラウンドの上に広がる雲一つない空を見ながら、この色は一生理解できないような気がした。
「じゃあみょうじ、」
「え?」
「続き、読めー」
「はいはい。えーっと…、彼らは私たちに背を向けることなくその場を…」
確かに、青春と空の色は似てる気がした。
気がしただけだけど。
でも、恋したら青春なのかな。なにをすれば青春してることになるのかな。
青春ってなんだろう。
「おい」
「ん?」
「テメェのせいであの訳分かんねぇ文章読むはめになったざけんな」
「あれ?授業は?」
「もう終わった」
「マジか。てかさ、青春って何?」
「しらねェ。恋でもすればいいんじゃねぇかィ?」
ま、てめえに出来るわけねェか、と吐き捨てて総悟は次の教室移動のためにと教室を出ていった。
やっぱ、恋?
んな事私にできるはずないじゃんか。
「ま、空色は一生分かんないかもしれないけど…いいよね」
私はちいさく呟いた後、ため息をついた。
謎な色
何もかも分かんない、ってことが分かった
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